国際対癌連合(UICC)による肺癌TNM分類は、新しく改訂された第7版が2009年12月に出版され、2010年1月から運用される。日本肺癌学会もこの改定を全面的に採用することを決め、国内での運用に向けて準備を進めている。11月12日から13日に東京で開催された第50回日本肺癌学会総会のシンポジム「新TNM分類の妥当性と問題点」で、愛知県がんセンター中央病院胸部外科の光冨徹哉氏が、日本肺癌学会肺癌取扱い規約委員会TNM分類委員会委員長として、今回の改訂に対する同学会の取り組みと改訂の概要を説明した。

 これまでの第6版は5319例のデータに基づくものであったが、新しい第7版は世界肺癌学会(IASLC)が1990年から2000年までの世界19カ国以上から集めた10万例を超えるデータベースを基に改定案を提案し、UICCに承認されたもの。

 日本肺癌学会がこの改訂に従うことを決定したのは、「国際的に同じ土俵の上で議論できるようにするため」と光冨氏。同学会は、第7版に対応してTNM分類、画像診断分類、手術記載、病理記載を掲載した「臨床・病理 肺癌取扱い規約(抜粋)別冊(改訂第7版案)」を作成し、本総会の参加者に配布した。

 同改定第7版案によると、第7版の主な変更点は次の通り。これまでと同様に、Tはtumor(原発腫瘍の進展度)、Nはlymph node(所属リンパ節転移の有無や範囲)、Mはmetastasis(遠隔転移の有無)を表す。

(1)T因子が細分化され、T1→T1a、T1b、T2 →T2a、T2bとなり、7cmを超える腫瘍はT2→T3と変更。
(2)肺内結節は同一肺葉内がT4→T3へ、同側他肺葉はM1→T4へ、対側肺はM1→M1aと変更。
(3)胸膜播種、悪性胸水、心嚢水はT4→M1a、遠隔転移はM1→M1bとなった。
 
 改訂第7版案から一例を紹介すると、T2の「腫瘍最大径>30mmでかつ≦70mm、または以下のいずれかであるもの ・主気管支に及ぶが気管分岐部より≧20mm離れている ・臓側胸膜に浸潤 ・肺門まで連続する無気肺か閉塞性肺炎があるが一側肺全体には及んでいない」に、T2aは「腫瘍最大径>30mmでかつ≦50mm、あるいは≦30mmで胸膜浸潤有り(PL1、PL2、葉間の場合はPL3)」、T2bは「腫瘍最大径>50mmでかつ≦70mm」の記載が加えられ、より詳細なものとなっている。

 病期分類も変更となり、これまでIB、IIBだった病期の一部はIIAに、IIIBの一部はIIIAに移動する。

 リンパ節マップも変更となり、新たなマップが作成された。大きな変更点は次の通り。

(1)米国胸部学会(ATS)によって作成された気管の正中線に沿っての任意の区分は排除され、左右#2と#4リンパ節の境界は気管左側壁に設定された。また、#2、#4との境界が不明瞭な#3は除かれている。
(2)Narukeマップで#7と#10に分けられた気管分岐下リンパ節は、すべて#7と定義されている。#1については、下頸部リンパ節が含まれている。

 UICCの肺癌TNM分類に十分な記載がされておらず疑問が生じた箇所については、日本肺癌学会肺癌取扱い規約委員会としての解釈を盛り込み、またCT画像および術野におけるリンパ節マップも作成し掲載した。

 光冨氏は新しいTNM分類の問題点として、第6版ではリンパ節転移がなければI期、肺門リンパ節転移があればII期、縦隔リンパ節転移があればIII期だったが、第7版では腫瘍径とリンパ節転移が複雑に組み合わされており複雑で覚えにくいこと、腫瘍が30mm以下でもPL1からT2となってしまうこと、リンパ節#7と#10、#1、#3と#10などについて従来のデータベースからの翻訳が困難なことなどを挙げた。

 同学会は改定案を学会ホームページに掲載するとともに、改定案に対する会員からの意見を募っている。2010年1月には改定案の案を外し、「臨床・病理 肺癌取扱い規約(抜粋)改訂第7版」とする意向だ。