上部早期胃癌に対し、腹腔鏡下胃亜全摘術(LAsTG)は腹腔鏡下胃全摘術(LATG)と比べて吻合部関連合併症が少なく、術後の栄養状態が良好であり、有用な術式となりうる可能性が示された。2月27日から3月1日まで大阪市で開催された第85回日本胃癌学会総会で、がん研有明病院消化器外科の小菅敏幸氏が発表した。

 早期胃癌に対するLATGは、手技的困難性と術後合併症への懸念から一般的に普及しているとは言えず、逆流症状や経口摂取の低下から術後QOLも満足できるものとはいえない。

 そのため同科では、上部早期胃癌に対し、症例を選択したうえで、小さな胃を残すLAsTGを行っている。LAsTGは、通常はLATGが考慮される病変に対し、腹腔鏡下に工夫を行うことで小さな噴門側胃を残す手術である。適応病変は、cT1N0、病変がU領域に存在し(大彎病変は除外)、口側のマーキングクリップから食道胃接合部(EGJ)が3cm未満の病変である。

 この手術では、術中内視鏡で腫瘍(マーキングクリップ)と噴門の位置を確認し、漿膜側に糸をかけてマーキングする。ピオクタニンで切離ラインを描いた後、胃を切離し、術中迅速病理診断で近位断端とNo.4sb(+No.4sa)リンパ節の癌陰性を確認する。再建は、経口アンビル(EEA-OrVil)を用いて端側胃空腸吻合を行い、Roux-en-Y法としている。
 
 今回は、この術式の安全性と術後栄養状態に与える影響について検討、報告された。

 対象は、2009年1月から2012年3月までに、同科でLAsTGを施行したU領域の早期胃癌患者57人。同時期にLATGを施行した110人との比較において、手術成績と術後成績を検討した。術後成績では、術後3カ月までに発生したClavien-Dindo分類のGradeIIIa以上の合併症を評価した。術後の栄養状態の指標には、術後3、6、12カ月目の血清アルブミン値と血清総蛋白値を用いた。

 LAsTG群とLATG群において、年齢中央値は62.2歳と65.7歳(p=0.047)、男性と女性の割合は37人/20人と92人/18人(p=0.006)、cT1a(M)/cT1b(SM)の割合は29.8%/70.2%と14.5%/85.5%(p=0.019)だった。BMI、米国麻酔学会の術前状態分類(ASA-PS)、腹部手術の既往などは、両群間に有意差はなかった。

 手術成績では、LATG群と比べてLAsTG群で有意に手術時間が短く、出血量も少なかった(それぞれp=0.017、p<0.001)。開腹手術への移行を要したのはLAsTG群では0、LATG群は2人(1.8%)だった(p=0.306)。

 術後3カ月までに発生した合併症のうち、吻合部関連合併症(縫合不全、出血、狭窄)はLAsTG群では3人(5.3%)であり、LATG群より有意に少なかった(p=0.040)。

 術後の栄養状態について、術後3、6、12カ月目の血清アルブミン値は、いずれもLAsTG群がLATG群よりも有意に高かった(それぞれp=0.002、p=0.047、p<0.001)。結果に影響する要因を調整するために行った共分散分析(ANCOVA)でも、術式と術後の栄養状態の指標(血清アルブミン値、血清総蛋白値)に強い相関が認められた(いずれもp<0.001)。

 吻合部関連合併症が栄養状態を悪化させる可能性も考えられるため、これらの合併症の有無別にサブ解析が行われたが、合併症と術後の栄養状態の指標に相関は認められなかった。

 小菅氏は「小さな噴門側胃を残すことが栄養状態に影響したと考えられる」と考察した。噴門側胃を残したことにより、逆流症状やダンピング症状の抑制、グレリンの分泌につながり、食事摂取量と関連した可能性が考えられるという。