腹膜転移を伴う胃癌に対し、S-1+パクリタキセル経静脈・腹腔内併用療法と胃切除による集学的治療は、安全かつ有効と考えられる結果が示された。2月27日から3月1日まで大阪市で開催された第85回日本胃癌学会総会で、東京大学外来化学療法部の石神浩徳氏が発表した。

 石神氏らは、フェーズ1試験とフェーズ2試験において、S-1+パクリタキセル経静脈・腹腔内併用療法の有効性を報告している。2007年から2009年に行われたフェーズ2試験では、対象の40人中20人がP3の患者だったが、生存期間中央値(MST)は23.6カ月、1年全生存率(OS)は78%となり、5年生存も7人で得られた。

 この結果から、S-1+パクリタキセル経静脈・腹腔内併用療法は第3項先進医療に承認され、2009年から2011年に新たにフェーズ2試験が行われ、1年OSは77%と同様の成績となった。現在、腹膜播種を伴う胃癌患者を対象として、同併用療法とS-1+シスプラチン併用療法を比較するフェーズ3試験(PHOENIX-GC)が進行中である。主要評価項目は全生存期間(OS)で、現在15施設が参加し、180人を目標に患者登録が進められている。

 今回の発表では、S-1+パクリタキセル経静脈・腹腔内併用療法が行われた患者100人のうち、奏効が得られ、胃切除が施行された62人の成績が報告された。

 治療は21日を1コースとし、S-1は80mg/m2を1日目から14日目に投与し、その後7日間は休薬した。パクリタキセルは1日目と8日目に、50mg/m2を静脈内に、20mg/m2を腹腔内に投与した。

 審査腹腔鏡によりP1(腹膜播種)またはCY1(腹腔内洗浄細胞診陽性)を確認し、腹腔ポートを造設後、化学療法を施行した。肉眼的根治が望める状態にまで奏効した患者を手術適応と判断した。手術適応は、腹水細胞診が陰性化し、画像診断上明らかな非治癒因子を認めないことだった。さらに腹腔鏡で腹膜播種の消失または明らかな縮小を確認したうえで、開腹手術に移行した。非切除例では化学療法を増悪まで継続した後、セカンドライン治療に移行した。

 62人の患者背景は、年齢中央値57歳(28-86)、男性は32人、ECOG PS 0の患者は47人だった。P0CY1が6人、P1が56人で、胃癌取扱い規約第12版によるP1、P2、P3はそれぞれ5人、16人、35人だった。腹水は34人、腸閉塞は7人、卵巣転移は10人に認められた。

 術前に行われた化学療法は、3コースが最も多く21人、次いで10-16コースの13人、4-6コースと7-9コースが各11人だった。術式では、胃全摘が56人、幽門側胃切除が6人に行われ、合併切除臓器は脾臓19人、膵体尾部4人、結腸13人、小腸2人、付属器8人だった。リンパ節郭清はD2が28人、D1+が34人に行われた。

 術後合併症として、縫合部の縫合不全および膵液瘻が各2人に発生したが、保存的に軽快した。

 腫瘍遺残をみると、R0が44人(71%)で達成され、組織学的効果判定基準では、Grade1b以上の奏効が26人(42%)で確認、このうち1人ではGrade3が得られた。リンパ節転移はN2以上の患者が多く、リンパ節転移数の中央値は4(0-67)、摘出リンパ節数の中央値は35(8-101)だった。

 MSTは、胃切除が行われた62人で34.5カ月、非切除の38人では13.0カ月だった。播種の程度別に2年生存率をみると、P0CY1およびP1(11人)で81%、P2・P3(51人)で53%となった。

 無再発生存期間/無増悪生存期間(RFS/PFS)中央値は19.6カ月となった。術後再発・増悪は46人に認め、このうち腹膜は24人と最も多かったが、リンパ節、肝、骨、卵巣など、さまざまな臓器で認められることもわかってきた。そのため石神氏らは、SOX療法(S-1+オキサリプラチン)とパクリタキセル腹腔内投与の併用についても検討を進めている。