血清HER2値測定は、IHC法で組織HER2陽性と判定された胃癌患者において、化学療法の治療効果を反映するマーカーとして有用である可能性が報告された。2月27日から大阪市で開催された第85回日本胃癌学会総会で、金沢大学消化器・乳腺・移植再生外科の尾山勝信氏が報告した。

 胃癌の腫瘍組織におけるHER2の発現状態は不均一性が高いことが知られている。尾山氏は、組織を対象とするIHC法やFISH法は腫瘍組織の不均一性の影響を受ける可能性が高いことから、血清によってHER2過剰発現を確認する方法が確立できれば有効であると考えた。そこで、血清HER2値が化学療法時の腫瘍マーカーとして有用であるかについて検討した。

 検討に先立ち、尾山氏は、HER2発現状態の判明している胃癌患者145人のデータを用いて血清HER2値との関係を解析し、血清HER2のカットオフ値を乳癌で知られている15.2ng/mLと設定。化学療法を施行した胃癌患者36人を対象に、化学療法時に血清HER2値を測定する有用性を検討した。

 患者のHER2発現状態は、IHC法で0が22例、1+が1例、2+が6人、3+が7例。治療レジメンを見ると、ドセタキセル+シスプラチン+S-1を併用する3剤療法が最も多く22例、ドセタキセル+シスプラチン+S-1+トラスツズマブが3例、イリノテカン単独投与が3例、S-1+トラスツズマブが3例、カペシタビン+シスプラチン+トラスツズマブは2例、S-1単独投与が2例、イリノテカン+シスプラチンが1例だった。トラスツズマブ承認前に治療した患者や、再発後のセカンドライン以降の患者が多かった。

 IHC法によりHER2陰性と判定された(0または1+)患者23人について、血清HER2を測定した結果、全例でHER2陰性(15.2ng/mL未満)だった。治療前後の血清HER2値の変化は、病勢進行(PD)の認められた9人と、部分奏効(PR)+安定(SD)だった14人との間に有意な差はなく、いずれも血清HER2値は治療後に同程度に上昇していた(p=0.294)。

 一方、IHC法によりHER2陽性と判定された(2+または3+)患者13人について見ると、血清HER2が陰性(15.2ng/mL未満)は4人、血清HER2陽性(15.2ng/mL以上)は9人だった。これについて尾山氏は、「血清HER2値が、HER2発現状態を診断するマーカーとして有効でなかった患者が4人いた」と説明した。化学療法前後の血清HER2値の変化量を見ると、PDとなった5人では治療後に血清HER2値が上昇したが、PRもしくはSDだった8人では血清HER2値が低下し、2群間に差が認められた(p=0.003)。

 これらの結果から尾山氏は、「組織HER2陽性例においては、血清HER2値が化学療法の治療効果を反映する可能性がある。現在、化学療法による治療効果を判定する際には画像診断が用いられているが、血清HER2値は化学療法の治療効果を判定する低侵襲なツールになりうる」と語った。

 また、今回の検討では全症例で測定病変があったことから尾山氏は、「血清HER2値が、“測定可能病変がない患者における治療効果判定ツール”となることが理想だが、現状ではそこまで言えない。今後さらに検討したい」と語った。