胃癌術後患者におけるOral nutritional supplements(ONS)の有用性を検討した前向きランダム化試験から、胃全摘(TG)症例では、経口摂取開始とともにONSを摂取することにより、術後の体重減少を軽減できる可能性が示された。2月27日から3月1日まで大阪市で開催された第85回日本胃癌学会総会で、東京大学医学部付属病院胃食道外科の小野山温那氏が発表した。

 胃癌術後は十分な食事摂取ができず、体重減少や活動性の低下によるQOLの低下を認める場合も多い。近年、ONSの考え方が広がっており、特に下部消化管手術ではその有用性が示されているが、上部消化管手術ではほとんど報告がない。

 そのため小野山氏らは、胃癌手術を施行した患者を対象として、ONSが全身状態に及ぼす影響と臨床的な意義を検討する前向きランダム化比較試験を実施した。主要評価項目は体重の変化率および変化量、副次的評価項目は体組成(体脂肪率・骨格筋量)、栄養学的指標、QOL(EORTC-C30)だった。

 対象は、2011年から2012年に同科で胃癌根治手術を行った77人。このうち幽門側胃切除(DG)は50人、胃全摘(TG)は27人に行われた。ONS介入群では、手術後の食事開始時より、通常の術後食に加え、1日当たり400kcalの濃厚流動食を12週間経口摂取することとした。濃厚流動食にはANOM(200kcal/200mL)を1日2パック使用した。

 対象77人の年齢中央値は71歳(37-89歳)、男性は50人だった。病期ではStage IAとIBが70%を占めた。DG例50人では、ONS介入群は30人、対照群は20人、TG例27人では、ONS介入群は17人、対照群は10人だった。術後補助化学療法は19人に行われた。

 ONSの摂取状況をみると、DG例では中央値が132kcl/日、総量として4分の1以上摂取できた患者は57%だった。これに対し、TG例では中央値が50kcal/日、総量として4分の1以上摂取出来た患者は33%にとどまった。

 体重変化率および体重変化量は、術後8週目と12週目において、TG例のONS介入群と対照群の間に有意差がみられた(いずれもp<0.05)。TG例ではONSの摂取により体重減少が有意に軽減した。

 体組成の変化率をみると、体脂肪変化率は、術後4、8、12週目のDG例とTG例の間に有意差がみられたが、ONS介入群と対照群の間に有意差はみられず、全体的に低下傾向がみられた。一方、骨格筋変化率は、術後4週目のDG例とTG例の間に有意差がみられたが、ONS介入群と対照群の間に有意差はみられなかった。また骨格筋変化率は、術後4週目以降に、DG例のONS介入群と対照群、およびTG例のONS介入群で上昇傾向がみられたが、TG例の対照群ではその傾向は乏しかった。

 これらの結果から、小野山氏は「TG例におけるONS介入群と対照群の体重減少の差は、体脂肪ではなく骨格筋量の差が寄与していると考えられる」と話した。

 栄養学的指標については、アルブミン、プレアルブミンなど複数の項目が検討されたが、いずれもONS介入群と対照群の間に有意差はなかった。

 またQOLについては、DG例とTG例の間に複数の項目で有意差がみられたものの、ONS介入群と対照群の間に有意差はなく、ONSの介入による改善効果は認めなかった。