胃癌に対し胃全摘術が行われた症例では、体重減少率がS-1による術後補助化学療法の継続に重要な因子である可能性が、レトロスペクティブな検討から示された。2月27日から3月1日まで大阪市で開催されている第85回日本胃癌学会総会で、三浦市立病院外科の青山徹氏が発表した。

 胃癌術後の体重減少率は10-20%程度であり、胃全摘例では体重減少が最も大きいことが報告されている。体重減少は、術後のQOLや化学療法の継続性に影響する重要な指標である。

 そのため青山氏らは、胃癌に対する胃全摘術後の体重減少率とS-1による術後補助化学療法の継続率、ならびに胃全摘術後の体重減少がS-1の継続率と関連するか否かを検討した。

 対象は以下の条件を満たす患者とした:(1)2002年3月から2010年5月までに胃全摘術を行い、(2)神奈川県立がんセンターのクリニカルパスに則り、(3)特別な栄養剤を使用することなく周術期管理を行い、(4)術後病理学的にStage II/IIIと診断し、S-1による術後補助化学療法を行い、(5)クレアチニン・クリアランス(CCr)60mL/分以上である。

 術後1カ月、3カ月、6カ月における体重減少率(%)を、「術前体重(kg)−各期間の術後体重(kg)/術前体重(kg)×100」で算出した。S-1の投与期間は、S-1治療開始日からイベント発生日(再発または有害事象による治療の中止)もしくは最終投与日までとし、S-1継続率をKaplan-Mayer法で算出した。

 58人が対象となり、このうち男性は46人、年齢中央値は62歳(36-80歳)、PS 0の患者が52人だった。S-1治療前のCCr値中央値は86mL/分、S-1治療前の血清アルブミン値中央値は4.0g/dL、Stage IIIが42人だった。

 胃全摘術後の体重変化は、手術前を100%とすると、1カ月、3カ月、6カ月でそれぞれ91.9%、89.4%、87.7%となり、術前から術後1カ月までの体重減少率が約10%と最も大きかった。胃全摘例におけるS-1継続率は、開始前を100%とすると、3カ月と6カ月でそれぞれ86.1%と76.6%となり、ACTS-GC試験(87.4%と77.9%)とほぼ同等だった。

 さらに青山氏らは前述の対象において、S-1継続率の危険因子を解析した。S-1開始時の因子(年齢、PS、体重減少率、血清アルブミン値、術後病理Stage)をもとに、単変量/多変量Cox比例ハザードモデルで解析した。

 臨床病理学的因子とS-1継続率の関連において有意差がみられたのは、術後1カ月の時点での体重減少率だった。3カ月、6カ月のS-1継続率は、体重減少率が15%以上の患者(10人)ではそれぞれ50.0%と30.0%で、体重減少率が10%未満の患者(29人)の82.8%と51.7%、同10%以上15%未満の患者(19人)の84.2%と79.0%と比べて、有意に低かった(p=0.017)。

 S-1継続に関連する危険因子として、単変量解析、多変量解析ともに、15%以上の術後体重減少が抽出された(いずれもオッズ比2.824、p=0.020)。6カ月のS-1継続率は、15%未満の体重減少群では62.5%だったのに対し、15%以上の体重減少群では30.0%となった。

 青山氏は「治療成績向上のためには術後1カ月の体重減少の抑制対策が必要」と話した。

 同氏によると、すでに体組成計を用いた詳細なデータを収集、検討中であり、さらに、術前・術後の食事に栄養機能食品を追加する群と食事のみの群を比較し、体重減少の抑制効果を検討するフェーズ3試験も進行中であるという。