胃癌治療ガイドラインの改訂作業が進められている。新ガイドラインは、現在と同じ「教科書形式」で今年秋以降に出版される予定。切除可能M1症例の治療など、未確定な問題に関しては解説を追加し、クリニカルパスやフォローアップのモデルを提示、さらに一般用ガイドラインも出版予定であるという。2月27日から大阪市で開催されている第85回日本胃癌学会総会のコンセンサスミーティング「胃癌治療ガイドライン第4版に向けて」で、がん研究会有明病院の佐野武氏の司会のもと、切除可能M1症例の治療、クリニカルパス・フォローアップ、食道胃接合部癌の扱い、手術リスク評価、残胃癌の扱いの各作業部会から概要が発表された。

 新ガイドラインは、エビデンスレベルや推奨グレードを設定する「EBM形式」ではなく、「教科書形式」を維持する予定であると佐野氏は説明した。EBM形式の場合、「個々のクリニカルクエスションに対しては明確な答えを示せるが、対象となる臨床状況が限定される」と佐野氏。一方、教科書形式の場合、「包括的に指針を示せるが、未確定な部分も含まれる危険性がある」。このため新ガイドランでは、未確定な問題に関して解説を追加する方針とした。

 胃癌治療ガイドラインでは、2010年に第3版が出版されたのち、2011年にToGA試験、2012年に二次治療の有効性に関する速報をウエブ上で公開している。ToGA試験の結果を受け、HER2陽性胃癌に対し、カペシタビン(または5-FU)+シスプラチンとトラスツズマブの併用が推奨レジメンとなったが、日本の進行胃癌の標準治療はS-1+シスプラチン(SP)であるため、SPへのトラスツズマブの併用が課題となっていた。

 現在、SPとトラスツズマブの併用に関するフェーズ2試験が複数行われている。HER2陽性患者対象のフェーズ3試験は症例数が少ないことから実施は難しいものの、「ガイドラインは実臨床での運用が最も重要であることを鑑みれば、今後いくつかのフェーズ2試験で有効性の報告があれば、SPとトラスツズマブの併用も治療の選択肢になるだろう」と、愛知県がんセンターの室圭氏。新ガイドラインでは、これらのフェーズ2試験を加味した形になる見込み。二次治療についても、イリノテカンとweeklyパクリタキセルを比較したWJOG4007試験などの結果を踏まえた形で記載される予定だ。

 新たな項目として、切除可能M1症例の治療が、大動脈周囲リンパ節転移症例、肝転移症例、腹腔洗浄細胞診陽性(CY1)症例に分けて解説される。たとえば、肝転移症例に関しては、肝切除の意義を検証した臨床試験はないが、単施設での長期間の報告から5年生存率は11〜42%であり、「慎重に適応を選べば切除によって長期生存が得られる可能性がある」といった記述が検討されていると、愛知県がんセンターの伊藤誠二氏は説明した。

 また食道胃接合部癌については、食道外科と胃外科で異なる手術が選択されていることから、胃癌学会と食道学会が合同で、共通の診断基準と標準治療を決定する作業を進めている。新しい診断基準では、「食道胃接合部(EGJ)の同定は、治療開始前に判断することが重要であり、基準項目の中では内視鏡による診断を優先する」ことが決まっていると、東京大学食道胃外科の瀬戸泰之氏は説明した。内視鏡においては、食道下部の柵状血管の下端をEGJとし、柵状血管が判定できない場合は胃の縦走ひだ口側終末部をEGJとするとした。また現在、食道胃接合部癌の全国調査を実施し、3000例を超える集計を行っていることも報告した。