進行胃癌では化学療法により腹腔洗浄細胞診が陰性化しても、癌細胞は腹腔内に存在して再発することがある。腹腔洗浄液中の癌胎児性抗原(CEA)mRNA発現量と細胞診を比較した研究で、腹腔洗浄液中に数百個以上の癌細胞が採取できないとCY0(腹腔洗浄細胞診陰性)と判定される可能性が高く、腹膜播種の早期診断には細胞診よりCEAなどをマーカーとする遺伝子検査が有用である可能性が示唆された。2月8日から10日まで大阪市で開催された第84回日本胃癌学会総会で、東京大学腫瘍外科の山口博紀氏らが発表した。

 同研究グループは、胃癌腹膜播種患者に対し、S-1とパクリタキセル経静脈・腹腔内化学療法を行っている。腹膜播種のモニタリングのため、腹腔内化学療法に使用する腹腔ポートから腹腔洗浄液や腹水を採取して、細胞診と遺伝子検査を行った。CEA mRNAは遺伝子増幅法であるTRC法で定量分析した。

 胃癌腹膜播種95人から678検体が得られ、このうち腹水が161検体、腹腔洗浄液は517検体だった。

 細胞診Class分類別に、CEA mRNAコピー数の平均値は、Class 1(376検体)では2410コピー、Class 2(8検体)は143コピー、Class 3(62検体)では14425コピー、Class 4(25検体)では45299コピー、Class 5(207検体)では130283コピーで、Class 5では他のClassに比べ有意にmRNAコピー数が多かった。

 CY1とCY0の区切りをROC曲線で求めたところ、カットオフ値は3200コピーであり、3200以下にはClass 1検体の82%、3200以上にはClass 5検体の78%が含まれた。基礎研究で胃癌細胞5個あたりCEA mRNAは約100コピーといわれていることから、3200コピーは癌細胞160個にあたる。このため山口氏は「腹腔洗浄液中に少なくとも100個単位の癌細胞を採取できないとCY0と判定される可能性が高い」と述べた。

 細胞診でCY0であっても、CEAは検出されることもあるため、「胃癌腹膜播種の早期診断には、細胞診よりも精度の高い遺伝子検査のほうが有用ではないか」とし、「これまでに2年半のデータが蓄積しており、今後、再発とコピー数の関連性などを解析していきたい」と話した。