腹腔鏡下胃切除術は進行癌を含む胃癌に安全に実行可能と考えられるが、現状では進行癌を含む胃癌の臨床試験は、技術の最適化が終了しつつある腹腔鏡下幽門側胃切除術(LDG)で治療可能な症例に限定することが望ましい──。この知見は、根治的腹腔鏡下胃切除術が施行された1000例の解析から示されたもので、2月8日から10日まで大阪市で開催された第84回日本胃癌学会総会で、藤田保健衛生大学上部消化管外科の佐藤誠二氏が発表した。

 同大では根治可能な進行胃癌はすべて腹腔鏡下胃切除術の適応である。佐藤氏らは、同大で腹腔鏡下胃切除術が行われた症例の治療成績を解析し、進行胃癌に臨床試験を行う際の問題点を検討した。
 
 対象は、1997〜2011年に根治的腹腔鏡下胃切除術が行われた1000人(年齢中央値64.5歳、男性696人)。このうちLDGは682人、腹腔鏡下胃全摘術(LTG)は177人に行われ、腹腔鏡下膵頭十二指腸切除(PD)が行われたのは5人だった。T2以深は32.9%、N+は28.3%で、術前化学療法は15%、D2以上の郭清は34%、合併切除は11.3%に行われた。全例の平均では、手術時間は310分、出血量は49g、手術関連死亡は0.1%、在院日数は14日だった。
 
 全身合併症は6.7%に発生し、呼吸器合併症(2.7%)、肝機能障害(1.1%)、せん妄(1%)の順に多かった。局所合併症は17.8%に発生し、創感染(3.7%)、縫合不全(3.4%)、膵液瘻(2.9%)の順だった。
 
 多変量解析で危険因子を抽出すると、全身・局所合併症ともに、男性、LTGとなった。
 
 胃癌取扱い規約第14版の病理分類のステージ別にみた5年生存率は、IA(650人)で98.9%、IB(114人)で93.5%、IIA(89人)で90%、IIB(64人)で81.2%、IIIA(56人)で64.6%、IIIB(41人)で54.1%、IIIC(33人)で24.9%、IV(36人)で0.9%となり、癌研胃癌データベース(1990年代)と同様の結果だった。
 
 再発形式では、腹膜(39%)ではSE症例が最も多く、リンパ節(24%)では2群郭清範囲内では認められなかった。また肝臓(15%)では全例がリンパ管と静脈の侵襲がともに陽性だった。
 
 合併症に関する解析では、LDGの全身合併症は4.4%で、危険因子は抽出されなかった。局所合併症は13.9%に発生し、危険因子として「初期100例」が抽出された。
 
 LTGの全身合併症は13.6%、局所合併症は30.0%に発生し、内訳では縫合不全(33%)が多かった。LTG+脾臓摘出またはLTG+膵体尾部脾合併切除の全身合併症は11.9%、局所合併症は37.2%に発生し、内訳では膵関連合併症(54%)が多かった。
 
 これらの結果から、LTGでは合併症を克服する必要があるが、LDGと比較してLTGは進行癌に行われることが多く、D2が多く、さらに術前補助化学療法施行例も多く、これらが合併症の発生に影響している可能性がある。LDGとLTGの5年生存率は各ステージで差がないことから、佐藤氏は「LTGの課題は合併症の克服」と話した。
 
 また同大では2006年から、5cm以上の大型腫瘤やVI型胃癌に対し、S-1+シスプラチンによる術前補助化学療法(NAC)を2コース行い、腹腔鏡下胃切除術施行後、R0切除例には術後にS-1を1年間投与している。ただし、2006年当初は治療前の審査腹腔鏡の施行率が低く、出血量、手術時間、合併症率はNACを行った場合にやや不良だった。
 
 5年生存率は見かけ上、NACを行わなかった場合と比較してNACを行った場合に不良であるが、腹膜転移/腹腔細胞診の陰性化によるダウンステージを評価する必要がある。そのため同大では2011年より、審査腹腔鏡を通過して評価するフェーズ2試験を開始している。