化学放射線療法は、骨髄抑制に対する慎重な管理が必要であるが、原発巣と領域リンパ節に対する治療効果が高く、T4かつN2以上の局所高度進行胃癌に対する治療戦略において重要な役割を担う可能性が示された。2月8日から10日まで大阪市で開催された第84回日本胃癌学会総会で、慶應義塾大学病院腫瘍センターの高橋常浩氏が発表した。

 同院では、2002年よりIV期の胃癌に対し、S-1と低用量シスプラチン(CDDP)による化学療法と放射線療法を併用する化学放射線療法を導入し、2010年からは術前治療としての安全性と有用性を検証している。高橋氏は、これまでの化学放射線療法の成績と展望について報告した。
 
 フェーズ2試験では30人を対象とし、奏効率は65.5%だった。手術が行われた10人全員でR0切除が可能で、組織学的治療効果はGrade2が4人、Grade3が4人だった。血液毒性は高頻度に発現し、また術後の後期合併症として縫合不全が1人に発生した。
 
 その後も症例が集積され、現在までに84人に化学放射線療法が行われた。奏効率は62%、生存期間中央値(MST)は494日だった。グレード3の白血球減少(45.2%)や好中球減少(35.7%)、グレード4の白血球減少(4.7%)や血小板減少(7.1%)など、血液毒性の発現率が高かったが、管理可能だった。
 
 切除可能と判断された31人に手術が行われ、30人でR0切除が可能だった。組織学的治療効果はGrade1b以上が26人、原発巣とリンパ節ともにGrade3となったのは10人だった。術後合併症として縫合不全と創感染が各2人に発生した。MSTは809日となったが、再発は腹膜(13人)に多くみられた。

 高い局所コントロールによる根治切除率の改善、高い病理組織学的効果、手術の安全性が確認されたことから、高橋氏らは、術前治療としてのフェーズ1試験(KOGC-01)を開始した。
 
 対象は、内視鏡生検で胃癌が証明され、リンパ節転移を有し、治療歴がなく、経口摂取可能な進行胃癌患者とした。
 
 術前治療は外来で行うこととし、S-1は80〜120mg/body、CDDPは週1回投与とし、いずれも3週投与、2週休薬で2コース施行した。CDDPの用量は、レベル0の15mg/m2からレベル3の30mg/m2まで4段階を設定した。照射は原発巣と周囲のリンパ節をターゲットとして、2Gy×5日/週で4週行い、計40Gyとした。
 
 目標症例数は各用量レベルに3〜6人とし、主要評価項目はCDDPの最大耐用量(MTD)と推奨量(RD)の推定、副次的評価項目は安全性と奏効率とした。
 
 10人(年齢中央値64.3歳、男性7人)が登録され、臨床病期はIII期9人、IV期1人だった。レベル0に6人、レベル1に4人が割付けられた。
 
 グレード4の血液毒性は発生しなかった。グレード3の血液毒性は、白血球減少がレベル0で17%、レベル1で75%に、好中球減少がそれぞれ17%と50%に発現した。グレード3以上の非血液毒性は発現しなかった。用量制限毒性(DLT)と定義した治療の遅延はレベル1で2人、レベル0で1人に発生し、RDはレベル0に決定した。
 
 評価可能だった9人中、部分奏効(PR)が6人で得られ、奏効率は66.7%だった。PRとなったのは、レベル0、レベル1ともに各3人だった。
 
 手術は7人に行われ、幽門側胃切除術が1人、胃全摘術が6人に行われた。7人でR0切除が可能だった。術後合併症として肺炎と乳糜腹水が各1人に発生したが、縫合不全や膵液漏の発生はなく、また治療関連死も発生していない。組織学的治療効果は、Grade3の1人を含め、5人がGrade1b以上だった。
 
 高橋氏は、「化学放射線療法に伴う瘢痕組織により解剖学的な膜の層構造が不明瞭になり、瘢痕組織に癌が含まれる可能性もあり、手術が“あいまい”になるため、術中の組織診断を併用する必要がある。また非奏効症例を早期に見極めるバイオマーカーが望まれる」と話した。