術後の15%以上の体重減少は、S-1術後補助化学療法の継続率を決定する唯一の危険因子であることが、レトロスペクティブな解析で明らかになった。2月8日から10日まで大阪市で開催された第84回日本胃癌学会総会で、神奈川県立がんセンター消化器外科の吉川貴己氏らが発表した。

 胃癌術後には体重が減少することが多いが、体重減少はQOLや予後、化学療法のコンプライアンスとの関連性が指摘されている。吉川氏らは、術後の経口摂取開始時期に着目して、周術期管理の違いによる体重減少を検討し、さらに体重減少がS-1による術後補助化学療法の継続率に影響するかどうかを調べた。

 まず、術後早期回復のための包括的なERAS(enhanced recovery after surgery)管理法が、古典的な管理法や早期経口開始法に比べ、胃癌術後の体重減少を抑制できるかどうかを検討した。

 古典的管理法(2000年まで実施)では術前日の夕食から術後1週間は絶飲食で、8日目の造影検査後から流動食を開始した。早期経口開始法(同2001-2009年)では術後4日目から経口摂取を開始した。ERAS管理法(同2009年以降)では術当日の朝まで経口補水液(OS-1)を摂取し、術後2日目に濃厚流動食を開始した。

 入院時の体重に対する術後1カ月の体重割合をみた結果、古典的管理法で最も体重減少が大きく、胃切除術を受けた患者では、古典的管理法では84%だが、早期経口開始法では92.9%、ERAS管理法では92.3%。胃全摘術の患者では、それぞれ79%、91.3%、92.5%で、早期経口開始法とERAS管理法での体重減少はあまり変わらなかった。

 続いて、胃切除術後の体重減少率がS-1術後補助化学療法のコンプライアンス低下の危険因子になるかを検討するため、S-1の治療成功期間(TTF)を決定する因子を解析した。

 対象は2002-2010年にD2胃切除術を行い、病理学的進行度II/III、術後6週以内にS-1を開始し、開始量は80mg/m 2、クレアチニンクリアランス(CCr)60mL/分以上の75人。

 単変量解析の結果、有意な因子として抽出されたのは体重減少のみで、体重減少率「15%未満」に対する「15%以上」のハザード比は2.537(p=0.031)。多変量解析でも有意な因子は体重減少のみであった。

 S-1継続率は、3カ月後の時点で、体重減少率15%未満の患者では82.8%だが、体重減少率15%以上では54.6%と低く、6カ月後ではそれぞれ73.2%、45.5%だった。

 これらのことから、「15%以上の体重減少はS-1術後補助化学療法の継続率を決定する唯一の危険因子であり、体重減少により予後が悪化する可能性がある」と吉川氏は述べた。またERAS管理だけでは胃癌術後の体重減少を防ぐことができないため、「栄養剤の介入が必要」とした。

 この結果を基に、胃全摘術を予定する患者を対象に、高濃度EPAを含有する栄養剤を術前術後に投与するフェーズ3試験が進められている。主要評価項目は術後1カ月、術後3カ月までの体重減少率、登録予定数は120例としている。