U領域胃癌の割合は90年代に比べて2000年代で有意に増加し、ML領域胃癌に比較して予後の改善が乏しいことが示された。U領域胃癌は進行して発見される頻度が高いことも明らかとなった。京都府立医科大学消化器外科の石本武史氏、小松周平氏らの研究で、2月8日から大阪市で開催されている第84回日本胃癌学会総会で石本氏が発表した。

 近年、胃癌については、U領域(上部)胃癌が増加傾向にあるとされている。そこで、石本氏らは疫学の変遷と臨床病理学的特徴について解析した。

 対象は、1970年から2006年に同院を受診した胃癌手術症例2284例。これを1970〜1999年の前期群と2000〜2006年の後期群に分け、U領域胃癌、ML領域胃癌の臨床病理学的比較を行った。

 前期群は1651例で、そのうちU領域胃癌は286例だった。後期群は633例で、うちU領域胃癌は142例だった。

 年齢80歳以上の患者が前期群では4%だったのに対し、後期群は9%で有意に高かった。

 胃癌の部位について、前期群はU領域17%、LまたはM領域82%、不明1%だったの対し、後期群はU領域22%、LまたはM領域74%、不明4%で、後期群で有意にU領域が多かった。血管浸潤について、陽性例は前期群で10%だったのに対し、後期群で28%と有意に多かった。

 深達度は、T1T2が前期群では62%だったのに対し、後期群では73%、リンパ節転移陽性例は前期群が53%だったのに対して後期群は38%、pStage I、IIが前期群は52%に対して後期群は68%、R0、R1切除が前期群が84%だったのに対し、後期群は91%で、後期群の方がより早期だった。

 U領域胃癌の割合を解析した結果、1970〜79年では18.7%、1980〜1989年は18.3%、1990〜1999年は15.5%だったのに対し、2000〜2006年は22.4%と上昇していた。

 次に前期群と後期群で各予後因子の5年生存率を解析した結果、前期群で有意な予後因子として病理学的グレード、リンパ節浸潤、血管浸潤、リンパ節転移、深達度、pStageなどが見いだされたが、後期群では前期群で見いだされた因子に加え、占拠部位が有意な因子として見いだされた。

 前期群ではM+L領域の5年生存率が61.8%、U領域の5年生存率が57.5%だったのに対し、後期群ではM+L領域の5年生存率が77.1%、U領域の5年生存率は65.5%で、U領域の生存率改善はM+L領域と比べて少なかった。

 後期群における占拠部位別の臨床病理学的因子を比較した結果、U領域は男性で有意に多く、血管侵襲陽性例が多く、pStage III、IVが有意に多いことが示された。

 後期群における占拠部位別の予後因子を解析した結果、M+L領域ではリンパ節浸潤、血管浸潤、リンパ節転移、深達度、pStageなどが予後因子となったが、U領域では加えて分化度も有意な予後因子だった。

 これらの結果から、(1)U領域胃癌の割合は後期群で有意に増加を認めたが、M+L領域に比較して予後の改善が乏しかった、(2)前期群、後期群で比較した結果、M+L領域胃癌ではリンパ節転移陽性、Stage III、IVの頻度が後期群で有意に低いのに対し、U領域胃癌はリンパ節転移、Stageともに後期群で低下を認めなかった、(3)後期群のU、M+L領域胃癌の予後因子の解析から、U領域胃癌では未分化型の予後が不良──とまとめた。そして、U領域胃癌の早期診断と未分化型を対象とした治療法の開発が必要と指摘した。