経口摂取不能胃癌は、PS不良や腹膜転移例が多く予後不良だが、経口摂取不良のみでは有意な予後不良因子にはならず、静注薬を主体とした初回化学療法により39%の症例に経口摂取改善が得られることが示された。3月3日から三沢市で開催された第83回日本胃癌学会総会で、愛知県がんセンター中央病院薬物療法部の溝田綾子氏が発表した。

 これまでの臨床試験の結果から、進行・再発胃癌の標準治療はS-1シスプラチンの併用だが、これらの臨床試験は経口摂取可能例が対象で、経口摂取不能例に対する化学療法には十分なエビデンスがない。

 腹膜転移を主体とした進行胃癌を対象に、5-FUと5-FU/MTXの効果を比較したJCOG0106試験では、対象となった237例のうち31例が経口摂取不能例で、そのうち15例(48%)で経口摂取が改善する結果が得られていた。

 そこで溝田氏らは、2000年〜2010年10月に初回化学療法を施行された進行・再発胃癌症例929例を対象に、経口摂取不能例と経口摂取可能例の治療結果を比較検討し、経口不能例における経口摂取改善割合を評価した。

 経口摂取不能は、栄養維持のための連日の点滴を必要とする症例と定義。経口摂取改善は、1週間を超えて点滴が不要となった場合とした。

 929例のうち、経口摂取可能で化学療法が可能だったのは734例。姑息的切除やバイパス術を行って経口摂取が可能となった例は78例で、この78例は経口摂取可能な化学療法施行例とした。一方、高度な腹膜播種、予後を規定する遠隔転移、状態不良例などによって経口摂取不能な例と、手術をしたものの経口摂取が不能だった例は合わせて117例だった。

 患者背景は、経口摂取可能例(以下、可能例、n=812)では男性68%、経口摂取不能例(以下、不能例、n=117)は男性53%で、PS2以上は可能例10%、不能例74%と有意に不能例で多く、胃原発がある例は可能例50%、不能例61%、腹膜転移がある症例は可能例49%、不能例81%、腹水がある症例は可能例19%、不能例59%で、不能例で有意に腹膜転移、腹水がある例が多かった。

 治療レジメンは、S-1あるいはカペシタビンを中心としたレジメンを実施されたのが可能例78%、不能例では22%だった。5-FU+CDDP/LV/MTXやタキサン(+5-FU、CDDP)、CDDP+CPT-11の投与を受けていたのは、可能例で20%、不能例では78%だった。

 可能例の全生存期間は13.1カ月、不能例の全生存期間は5.0カ月だった。年齢や性、PS、転移部位、腹膜播種、腹水の有無などで調整をした結果、経口摂取不良のみは強い予後不良因子ではないことが示された。

 経口摂取不能例における化学療法後の経口摂取改善率は39%(46例)。そのうちNGチューブやイレウスチューブなどを必要とした患者26例では、8例(31%)が経口摂取可能となった。

 経口摂取可能となった期間の中央値は3.5カ月だった。経口摂取改善の予測因子を解析した結果、経口抗癌剤と比較して5-FUやタキサンを中心とした静注抗癌剤は有意に経口摂取を改善していた。また、PSが良好な症例、胃切除歴のない症例で改善しやすい傾向にあった。

 レジメン別に治療期間、生存期間を評価した結果、5-FUベースのレジメン(48例)ではTTFは2.0カ月、OSは6.4カ月。タキサンベースのレジメン(40例)ではTTFは2.5カ月、OSは5.0カ月で、S1/カペシタビンベースのレジメン(26例)ではTTFは0.9カ月、OSは4.0カ月だった。経口摂取改善率、TTF、OSについて、経口抗癌剤ベースのレジメンを受けていた群は静注薬ベースのレジメンを受けていた群と比べて低かったが、これは経口抗癌剤を処方されていた患者の多くは経口摂取が可能だったものの、レジメン通りに服薬できなかったことが原因と考えられた。