幽門狭窄を合併したT4b切除不能胃癌に対するバイパス術は、S-1を用いた化学療法が施行可能となり、摂食状況も改善することから有効な治療戦略の1つであることが示された。3月3日から三沢市で開催された第83回日本胃癌学会総会で、市立堺病院外科の松嶋祐子氏が発表した。

 これまでの臨床試験の結果から、進行・再発胃癌の標準治療はS-1とシスプラチンの併用となっている。経口摂取不能例に対しては、5-FUなどの点滴を用いた抗癌剤が推奨されている。一方、日常臨床では、幽門狭窄により経口不能となった切除不能胃癌症例に対して、QOLの改善やS-1投与が可能になることを期待してバイパス術が施行されることが多い。

 そこで松嶋氏らは、幽門狭窄を合併したT4b切除不能胃癌に対するバイパス術後にS-1を用いた化学療法の効果を検討した。

 対象は2006年1月から2010年6月までに、幽門狭窄により経口不能のため、初回治療としてバイパス術を施行した胃癌21例のうち、術後S-1を用いた化学療法が実施可能だった14例。7例については全身状態が悪い、あるいは腎機能や肝機能の低下により術後の化学療法が不適だった患者だった。

 バイパス術は、Billroth II法、あるいはRoux-en-Y法、胃半離断で行い、後向き解析として、1.手術合併症、術後化学療法開始までの日数、副作用、2.術後の経口摂取改善、3.抗腫瘍効果、治療成功期間、全生存期間--の3つを評価した。

 患者背景は、男性9例、女性5例で、年齢中央値は64歳(43-81歳)、PS0 10例、PS1 2例、PS2 2例で、全例に通過障害が認められた。組織型は分化型11例、肉眼型は1/2/3/4がそれぞれ0/1/12/1。TNM分類はいずれもT4bで、N 0/1/2/3がそれぞれ2/2/6/4、M 0/1がそれぞれ6/8だった。

 化学療法のレジメンは、S-1単剤が5例、S-1/CDDPが6例、S-1/CDDP/PTXが2例、S-1/PTXが1例だった。

 手術時間中央値は136分、出血量中央値は40mL、術後合併症は14例中2例で、縫合不全と術後イレウスだったが、どちらも保存的治療で改善した。術後化学療法開始までの日数中央値は31日(11〜45日)だった。

 化学療法の有害事象として特徴的だったのは、貧血が42.9%、血小板減少が28.5%と多いことで、これは残存した腫瘍からの出血が原因と考えられた。

 術後の経口摂取状況は、GOOSSスコア(Gastric Outlet Obstruction Scoring System)で評価した。術前に経口摂取不能だったのは9例、液体のみだったのは5例で、1カ月後に固形物摂取可能になったのは13例、やわらかい食物の摂取可能となったのは1例。3カ月後は固形物可能例は13例、やわらかい食物摂取可能例は1例、6カ月後では固形物可能例は9例、やわらかい食物摂取可能例は1例、液体のみ可能な例は4例で、術前に比べて有意に経口摂取状況は改善していた。経口摂取開始時期の中央値は4日(3〜8日)だった。

 抗腫瘍効果は、RECISTで評価可能な12例について行い、PRが5例、SDが5例、PDが2例で、奏効率は41.7%、病勢制御率は83.3%だった。

 治療成功期間(TTF)中央値は5.5カ月で、治療中止理由は12例中11例が原疾患の悪化、1例が腎機能低下で、セカンドライン治療への移行率は12例中10例(83.3%)だった。

 全生存期間中央値は12.3カ月だった。

 こうした結果から松嶋氏は、「幽門狭窄を合併した切除不能胃癌に対するバイパス術は、S-1を用いた化学療法を行うことができ、摂食も可能となってQOLが改善することから、有用な治療戦略の1つであると考えられる」と締めくくった。