近年増加しつつある食道胃接合部癌に対して、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は再発もなく安全に行うことができることが、静岡県立静岡がんセンター内視鏡科の今井健一郎氏らの後向き解析で明らかになった。3月3日から5日に青森県三沢市で開催された第83回日本胃癌学会総会で発表された。

 解析は、ESDを施行した早期胃癌1502病変から遺残再発、残胃・胃管例を除いた1181人、1380病変を対象とした。食道胃接合部癌の49人、50病変と、それ以外の早期胃癌1139人、1330病変で臨床病理学的所見や治療成績を比較した。なお食道胃接合部癌は、組織学的腺癌でSiewert 2型と定義された。

 比較の結果、食道胃接合部癌は小彎に多く局在し、食道胃接合部癌は68%、その他の早期胃癌は38%が小彎に認められた。肉眼型分類の0-I型が食道胃接合部癌で多く、食道胃接合部癌で30%、その他の早期胃癌では5%だった。腫瘍径はそれぞれ25.1mm、22.1mmと有意な差がなかった。組織学的潰瘍(UL)は食道胃接合部癌で少なく、それぞれ6%、18%だった。

 手術時間および一括切除率、一括断端陰性切除率、治癒切除率に有意な違いはなかった。術中穿孔は食道胃接合部癌が0%、その他の早期胃癌が5%(p<0.01)、術後出血はそれぞれ8%、11%(p<0.01)と、食道胃接合部癌で有意に少なかった。

 「胃癌治療ガイドライン医師用第3版」に基づいて、ESD後の病理組織学的治癒判定を行ったところ、「治癒切除」と判定された16人では、全例が経過観察となり、再発は認められなかった(観察期間中央値11カ月)。「適応拡大治癒切除」が行われた20人では、19人が経過観察、1人で追加切除が行われた。経過観察の患者のうち1人が他の疾患で死亡したが、追加切除の患者も含め19人では再発はなかった(観察期間中央値8カ月)。

 また「非治癒切除」と判定された13人では、経過観察が6人、追加切除が7人で、うち4人はリンパ節陽性であった。追加切除を行った患者のうち1人が胃癌で死亡したが、それ以外の患者では再発はなかった(観察期間中央値32カ月)。

 このため、「胃癌治療ガイドライン医師用第3版に基づいて、治癒切除、適応拡大治癒切除と判定された症例では、再発および原病死を認めなかった」とし、「食道胃接合部癌に対するESDは安全かつ有用と考えられた」と述べた。