上部進行胃癌に対する脾摘の意義を検討する無作為化比較試験(JCOG 0110試験)で、脾摘は脾温存に比べて手術侵襲性は高いが、手術死亡は全体で0.6%と低く、安全に施行されていることが確認された。癌研有明病院消化器外科の佐野武氏が、3月3日から5日に青森県三沢市で開催された第83回日本胃癌学会総会で発表した。2011年12月に第3回中間解析が行われ、その結果次第で、試験の継続、中止が決定される。最終的な生存期間の解析は2014年4月に予定されている。

 上部進行胃癌に対するD2リンパ節郭清において、脾門リンパ節(No.10)と脾動脈幹遠位リンパ節(No.11d)の完全郭清のために脾摘が行われてきたが、脾摘が予後を改善するかどうかについては議論があった。

 JCOG 0110試験は、75歳以下で大弯病変のない胃上部進行癌(T2-4、N0-2、M0)を対象としている。腹腔洗浄細胞診陰性(CY0)で、治癒切除が可能であることを確認した後、術中にD2郭清を伴う胃全摘術と膵温存脾摘を行う群(以下、脾摘群)とD2郭清を伴う胃全摘術で膵脾脱転しない群(以下、脾温存群)に無作為に割り付けた。術後は5年間の経過観察を行う。

 主要評価項目は全生存期間、副次評価項目は術後合併症の発生割合、手術時間、出血量で、脾温存群の非劣性を検証するデザインで行われた。

 2002年6月から患者登録が開始されたが、ACTS-GCの結果から、2006年7月にいったん登録が中止された。2006年12月に第1回中間解析が行われ、試験の継続が決定された。2007年にプロトコールが改訂され、当初の「術後補助療法を施行しない」設定から、「病理学的ステージ2-3の胃癌には術後1年間のS-1投与」の設定に変更された。2007年8月から登録を再開し、2009年3月に505人を集積して登録を終了した。2009年12月に第2回中間解析が行われ、試験は継続されることになった。

 術後在院死亡は3人(0.6%)で、このうち脾摘群(254人)は1人、脾温存群(251人)では2人だった。リンパ節郭清個数の中央値は脾摘群で56個、脾温存群は50個、2009年12月の時点で全体の3年生存率は82.8%、5年生存率は73.1%であった。

 手術時間の中央値は、脾摘群が231分、脾温存群が224分で有意差はなかったが(p=0.525)、出血量は脾摘群で多く、それぞれ390.5mL、315.0mLだった(p=0.02)。手術合併症の割合は、脾摘群が30.3%、脾温存群が16.7%だった(p<0.001)。術後合併症は、膵液漏(脾摘群で12.6%、脾温存群で2.4%)、腹腔内膿瘍(同7.9%、4.0%)、イレウス(同2.4%、0.4%)で脾摘群のほうが多かった。

 副次評価項目の結果から、「脾摘は脾温存に比べて侵襲の高い術式である。生存解析の結果で脾温存群の非劣性が証明されれば、脾温存が標準手術となる」と述べた。最終の生存解析では、プロトコール改訂前後の比較も行われる。