腹腔鏡下胃切除術後の術後膵液瘻(postoperative pancreatic fistula:POPF)は、男性で、BMIが高い症例に多く発生していることが、700人を超える患者の検討から示された。さらにPOPFが発生した患者では、手術時間が長い症例と迷走神経腹腔枝が温存できなかった症例が多く含まれることも明らかになった。3月3日から5日にかけて青森県三沢市で開催された第83回日本胃癌学会総会で、癌研有明病院消化器外科の渡邊良平氏が発表した。

 POPFは、仮性動脈瘤を合併するなど重篤な胃癌術後合併症の一つであり、入院期間の遷延につながる。POPFの現状とリスク因子の把握は重要と考えられることから、渡邊氏らは、同院で行われた腹腔鏡下胃切除術後の膵液瘻の発生頻度とそのリスク因子を調査した。

 対象は、2005年7月から2009年12月までに、胃癌に対し腹腔鏡補助下幽門側胃切除術(LADG)を施行した493人と、腹腔鏡補助下幽門保存胃切除術(LAPPG)を施行した305例の計798人。POPFを合併した症例と合併しなかった症例を、レトロスペクティブに比較検討した。

 POPFの診断基準として、術後第3病日のドレーンアミラーゼ値が血清アミラーゼ基準値の3倍以上の症例、腹部症状や発熱を認め、腹部CTで膵周囲に液状の貯留を認める症例、膵周囲の液状の貯留をドレナージした時の排液アミラーゼが血清アミラーゼ基準値の3倍以上の症例とした。

 International Study Group of Pancreatic Fistula(ISGPF)が提唱したPOPFの重症度分類から、発熱を認め、抗生剤の投与やIVHの管理、絶食、ドレーンの入れ替えなどを要した症例を「B」、さらに侵襲的な穿刺ドレナージや再手術などを要した症例を「C」とし、BとCに該当する症例をPOPFとした。その結果、POPF群は34人、POPFを認めなかった群(NPOPF群)は764人となった。

 両群で有意差がみられたのは、男性比、BMI、手術時間、迷走神経腹腔枝の温存についてだった。

 男性の割合は、POPF群88.2%、NPOPF群60.5%だった(p=0.001)。BMIは、POPF群24.8±2.5、NPOPF群22.5±3.2だった(p<0.001)。術前の合併症や進行度に有意差はなかった。

 手術時間は、POPF群の251.3±46.7分に対し、NPOPF群は229.7±53.9分で、POPF群で有意に長かった(p=0.022)。迷走神経腹腔枝を温存できなかった症例は、POPF群の67.6%に対し、NPOPF群は44.2%で、POPF群で有意に多かった(p=0.01)。再建法や術者の経験数、胃壁深達度、リンパ節転移に有意差はみられなかった。

 術後入院日数はPOPF群の29.6±19.9日に対し、NPOPF群は12.6±6.7日となった(p<0.001)。

 多変量解析においても、男性、BMIが高いこと(24以上)が、POPFと相関する独立した因子として示された(それぞれ、p=0.025、p=0.019)。