幽門側胃切除術を施行した胃癌患者に対し、手術部位感染(SSI)予防を目的とした術後の抗生物質投与は推奨されないことが、大阪消化管がん化学療法研究会(OGSG)によるフェーズ3の多施設共同無作為化比較試験(OGSG0501)の最終解析から示された。3月3日から5日にかけて青森県三沢市で開催された第83回日本胃癌学会総会のシンポジウム「エビデンスに基づいた外科治療」で、大阪大学大学院消化器外科の黒川幸典氏が発表した。

 米国疾病対策センター(CDC)のガイドラインでは、SSI予防を目的として、皮膚切開の30分前および術中3〜4時間毎の抗生物質投与が推奨されている。一方、国内では術中に加え、術後にも抗生物質を数日間投与することが一般的である。欧米と異なり、国内では拡大リンパ節郭清や侵襲度が大きな手術が行われていることなどが、その理由として挙げられる。

 OGSGによる過去の多施設共同のフェーズ2試験では、術直前および術中に抗生物質を投与した症例のSSI発生率は、術後にも投与した症例のデータと同等だった。この結果をふまえ、黒川氏らは、胃癌に対する幽門側胃切除術後の予防的抗生物質投与が不要かどうかを検証するため、非劣性デザインの多施設共同のフェーズ3試験を実施した。

 2005年6月から2007年12月までに、7施設から幽門側胃切除術を予定している胃癌患者355人が登録された。割付調節因子に施設、米国麻酔科学会(ASA)スコアを用い、術中に電話登録を行い、術中投与群に176人(うち男性115人、年齢中央値66歳)、術中術後投与群に179人(同125人、65歳)を無作為に割付けた。

 術直前および術中3時間ごとにセファゾリンを1gずつ投与し、術中術後投与群では術後も第2病日までさらに5回投与した。

 主要評価項目はSSI発生率とし、副次的評価項目は遠隔部位感染の発生率、発熱(グレード1以上)の発生率、術後第3病日の体温、術後入院日数とした。

 臨床病理学的因子のBMI、予後栄養指数(PNI)、胃壁深達度、リンパ節転移、進行度は、両群でほぼ差がなかった。手術因子の手術時間、出血量、リンパ節郭清、吻合法、体内結紮糸、ドレーン留置にも差はなかった。リンパ節郭清でD2-3を行ったのは、術中投与群123人、術中術後投与群120人だった。再建法は両群でやや異なり、Roux-en-Y法は術中投与群、Billroth-I法は術中術後投与群で多かった。

 両群ともにグレード3以上の薬物有害反応は認められなかった。

 SSI発生率は、術中投与群が8人で4.5%(95%信頼区間 2.0〜8.8%)、術中術後投与群が16人で8.9%(同 5.2〜14.1%)となった。表層切開部SSIや深部切開部SSIと比べて臓器/体腔SSIの発生が多く、術中投与群で6人、術中術後投与群で11人だった。SSI発生のリスク比は1.97(同 0.86-4.48)だった。統計学的な有意差をもって術中投与群の非劣性が証明された(p<0.001)。

 副次的評価項目で術中術後投与群の有用性を示した因子はなかった。遠隔部位感染は、術中投与群9人(5.1%)、術中術後投与群6人(3.4%)に発生し、リスク比は0.65だった(p=0.440)。グレード1以上の発熱は、術中投与群60人(34.1%)、術中術後投与群52人(29.1%)に発生し、リスク比は0.85だった(p=0.361)。術後第3病日の体温(最高値)は、術中投与群37.0度、術中術後投与群36.9度だった(p=0.136)。術後入院日数は両群ともに12日間となった(p=0.645)。

 SSI発生に関する多変量解析では、BMI(25以上)のみに有意な関連性が認められた(p=0.039)。