胃癌化学療法の重篤な有害事象(severe adverse event:SAE)による緊急入院(SAE入院)の背景因子について、全治療ラインを対象とした検討が行われ、SAE入院率は二次治療以降に高くなる傾向と、転移臓器部位により異なる可能性が示された。3月3日から5日にかけて青森県三沢市で開催された第83回日本胃癌学会総会で、北海道大学消化器内科学の小林良充氏が発表した。

 化学療法は外来通院での施行が主体となってきており、入院は必要最低限とされる傾向にある。原疾患の増悪や重篤な有害事象の発現は緊急入院を要し、その予測と準備は重要である。したがって、SAEによる入院の高危険群の背景因子を検討することは意義があると考えられる。

 こうした背景から小林氏らは、胃癌化学療法における入院の内訳を調査、SAE入院の内容を把握し高危険群を推察することを目的として検討を行った。

 定義として、SAEは重症度を問わない緊急入院を要する有害事象、SAE入院群は経過中に一度でもSAEによる入院をしたものとした。対象をSAE入院群と非SAE入院群に分け、患者背景、投与薬剤、治療経過を調査し、SAEの背景因子を検討した。

 同科で2007年1月から2010年3月に入院加療を行った根治切除不能・進行胃癌患者112人中、外来非移行例、重複癌や追跡不能などの症例を除く98人を対象とした。

 SAEによる緊急入院を要したのは33人で、これをSAE入院群とした。予定入院のみの37人と原病増悪による入院の28人を合わせ、65人を非SAE入院群とした。

 SAE入院群33人において、入院のイベントは計44回だった。原因の内訳で最も多かったのは感染症の43.2%(19回)で、有熱性の好中球減少8回が含まれる。嘔気・嘔吐・食欲不振が22.7%(10回)、腸炎11.4%(5回)がこれに次いだ。

 SAE入院率をレジメン別にみると、標準治療のS-1+CDDP(SP)では16.7%だった。イリノテカン(CPT-11)単剤では33.3%、ドセタキセル単剤では30.4%とやや高い傾向がみられたが、有意差はなかった(SPとの比較、それぞれ、p=0.139、p=0.236)。S-1単剤では22.2%(p=0.761)、CPT-11+CDDP(CP)では10.0%(p=0.715)だった。

 SAE入院率を治療ライン別にみると、一次治療では16.3%だった。二次治療では21.2%、三次治療では23.2%、四次治療では23.8%となり、二次治療以降で高くなる傾向がみられた(一次治療との比較、それぞれ、p=0.083、p=0.351。p=0.560)。

 背景因子との相関は、性別、年齢、PS、組織型、CVポートの有無、転移臓器数について、いずれも有意差はなかった。SAE入院率と原発巣・転移臓器との相関をみると、肝転移を有する症例でSAE入院率がやや高い傾向がみられたが、有意差はなかった(p=0.122)。

 小林氏は「今回は全ての治療ラインを対象とした検討であり、今後は治療ラインを揃えた対象での検討が必要と考える。特に一次治療のSPでの検討につなげていきたい」と話した。