「胃癌治療ガイドライン 医師用 第3版」が2010年10月に発行された。そのなかでファーストライン治療としてS-1とシスプラチン併用が推奨されているが、「投与が難しいときはS-1単独を検討してほしい」と大阪医科大学化学療法センターの瀧内比呂也氏が、3月3日から5日に青森県三沢市で開催されている第83回日本胃癌学会総会の「コンセンサスミーティング」で話した。

 第3版ガイドラインは、「論文化、第3相試験を含めた一定の評価とコンセンサス、国内承認の3点を原則に作成された」(瀧内氏)。特に化学療法では、国内の無作為化比較試験の結果が反映されたものとなっており、ファーストライン治療は、SPIRIT試験の結果から、S-1とシスプラチンの2剤併用が標準治療となった。

 しかし経口摂取ができない場合や、中等量以上の腹水貯留や腸管狭窄がある場合、あるいは高齢者では、S-1とシスプラチンの有用性は十分に検証されていない。この場合、「シスプラチンを分割したり、減量するのではなく、経口可能であればS-1単独でも十分に対応できる」と瀧内氏はいう。また経口摂取ができないときは5-FU単独を考慮することがガイドラインでは奨められている。

 S-1とシスプラチン併用が実際に使える患者さんは半数ほどともいわれており、S-1とシスプラチンが推奨レジメンであっても、すべての患者さんに絶対に使わないといけないものではない。ただし、司会の癌研有明病院の佐野武氏は、「ガイドラインは“奨め”であり、臨床判断で変更してもいいが、ガイドラインを無視した治療は危険であり、ガイドラインは参照してほしい。そうでない治療をするときは、患者さんへの説明はしてほしい」と話した。

 セカンドライン治療については、日本は海外に比べてセカンドライン治療への移行率が70%以上と高いのが特徴と瀧内氏は説明した。しかしセカンドライン治療の推奨レジメンは現時点ではなく、ガイドラインでは初回では使用されていない薬剤の併用あるいは単剤使用が薦められている。

 実際には、再発例に対し、タキサン系抗癌剤やイリノテカンが使われ、海外ではイリノテカンの有用性も報告されている。国内でもタキサン系抗癌剤やイリノテカンを用いた無作為化比較試験が進行している。WJOG4007では2次治療としてイリノテカン投与とパクリタキセル週1回投与が比較検討されており、「秋には結果が報告される予定で、その結果を待ちたい」と瀧内氏は話した。

 また海外のデータに関しては、欧米のレジメンをそのまま適応することは慎重にして、「海外のエビデンスを取り入れる際は、日本でも臨床試験を行う姿勢が大切」と瀧内氏は述べた。なおHER2陽性胃癌に対するトラスツズマブの使用は、保険適応になれば、「ガイドラインの速報としてウエブ上で出す準備をしている」と佐野氏は話した。