昨年10月に出版された「胃癌治療ガイドライン第3版−付 胃悪性リンパ腫診療の手引き―第3版」では、胃癌取扱い規約第14版の改訂に合わせ、大幅な変更が行われた。手術については、胃の切除範囲と切離断端距離の推奨を示し、胃切除術式を選択するうえでの原則が示された。さらにリンパ節郭清範囲が胃切除術式別に定義され、その適応が明示された。3月3日から5日にかけて青森県三沢市で開催されている第83回日本胃癌学会総会のコンセンサスミーティング2「新胃癌治療ガイドラインにおけるコンセンサス(徹底)」で、胃癌治療ガイドライン検討委員会第3版の作成委員会委員である東京大学胃食道外科の瀬戸泰之氏が解説した。

 新しいガイドラインの大きな特徴は、胃の切除範囲とリンパ節郭清範囲がリンクし、両者を一体として捉えていることである。遠隔転移がなく、深達度(T)がT1でかつリンパ節転移(N)がある場合や、T2〜T4aの場合、推奨される手術法は定型手術とD2郭清となる。

 治癒手術の一つである定型手術は、胃の2/3以上の切除とD2リンパ節郭清を行うことと定義されている。もう一つの治癒手術の非定型手術には、縮小手術と拡大手術が含まれる。

 胃の切除範囲の決定は、Tと遠隔転移の有無の判断から始まる。その結果、定型手術が必要と考えられたら、T2以深の腫瘍では、限局型で3cm以上、浸潤型で5cm以上の切離断端距離を確保することが望ましい。T1の腫瘍では2cm以上確保するよう努める。

 切離断端距離をこのように確保して定型手術を行う場合、胃切除範囲は、胃全摘術または幽門側胃切除術となる。

 新しいガイドラインでは、リンパ節郭清範囲のD1、D1+、D2が術式ごとに定義されている。定型手術では、胃全摘術のD2郭清はD1(No.1〜7)+No.8a、9、10、11p、11d、12aを、幽門側胃切除術のD2郭清は、D1(No.1、3、4sb、4d、5、6、7)+No.8a、9、11p、12aを郭清する。

 一方、T1でN0の場合に選択される非定型手術の縮小手術の一つに、幽門保存胃切除術(Pylorus-preserving gastrectomy:PPG)がある。適応は、胃中部の腫瘍で、遠位側縁が幽門から4cm以上の場合である。胃上部1/3と幽門前庭部3、4cm程度を温存する。もう一つの縮小手術に噴門側胃切除術があり、適応は胃上部の腫瘍で、胃の1/2以上を温存する。縮小手術には他に胃分節切除術と胃部分切除術があるが、これらは研究的な手術法と位置付けされた。

 これらの胃切除範囲をより明確にしてほしいとの要望を受けたことから、瀬戸氏らワーキンググループは、次のような案をまとめている。

 胃全摘術は「噴門(胃食道接合部)および幽門(幽門輪)を含んだ胃の全切術」、幽門側胃切除術は「幽門を含んだ胃切除。噴門は温存。定型手術では胃の2/3以上切除」、幽門保存胃切除術は「胃上部1/3と幽門および幽門前庭部の一部を残した胃切除」などのように表現される。さらに胃分節切除術は「PPGに該当しないもの」として区分する。

 同グループは各術式の英語の名称についての案もまとめており、これらの案は今後、関連学会で検討される予定であるという。