胃癌に対する術後補助化学療法の歴史は長い。過去に行われた研究から見えてくる臨床試験の問題点やこれからの課題などについて癌研有明病院顧問の中島聰總氏が3月3日から5日に新潟市で開催された第82回日本胃癌学会総会の企画演題で発表した。

 胃癌の治癒切除後に行われる補助化学療法に関しては、1950年代から臨床試験が行われてきたが、有用性を示した研究は少なく、統計学的な問題点も指摘されている。

 1960年代には、国立病院を中心とした研究班(小山班)や厚生省(当時)のがん研究助成金による研究班(今永班・近藤班)が組織され、MMC、5FU、CPA、FT207、NCS、CQなどの薬剤を使った試験が1980年代初頭まで行われた。手術単独群対手術と化学療法群との比較対照試験が中心に実施されたが、中島氏によると、これらの臨床試験からは明らかな有効性は示されなかったという。

 1970年代後半から胃手化研(胃癌手術の補助化学療法研究会)によって大規模な研究が開始されるようになるが、中島氏は「このことは大きな動きだった」と指摘した。ただ、1980年から1990年代に行われた臨床試験ではMMC、5FU、MFC、FT207などの薬剤が使われたが、大規模臨床試験には至らなかった。

 1990年代に入るとJCOGによる研究が始まり、シスプラチン(CDDP)併用療法が補助化学療法として導入されるようになった。そして2000年代は進行胃癌に対するS-1やCPT-11、タキサンなどの有効性が認められた。

 補助化学療法の歴史を3時代に区分すると、1960〜1990年までの30年間は中等度の進行癌の術後に対してMMCなどが延命効果を示したものの、有効な化学療法がない時代になるという。1990〜2000年までは、CDDPやADM、CPAやS-1などの新しい薬剤が登場した時代になる。そして、2000年以降はUFTやS-1などが報告されるようになり、ACTS-GC試験によって補助化学療法としてS-1の有効性が確立した時代に区分できるという。なかでも、1000例を超える大規模研究で有意差を出し、術後補助化学療法としてS-1の有効性を確立したACTS-GC試験は「誇るべき研究だ」と中島氏は評価した。

 補助化学療法の歴史の中では対照群をどのように設定したかがもっとも重要となり、対照群には臨床試験企画時のベースラインの治療を設定すべきであると中島氏は臨床試験のあり方にも言及した。その上で、過去の臨床試験を振り返りながら、臨床試験の条件としては、入念なプロトコールと同時に記録や解析方法の重要性を強調するとともに、医師の研究に対する情熱も大切な要素であることを強調した。

■訂正
 3月15日に以下を訂正しました。
・下から3つ目の段落に「S-1+シスプラチン(CDDP)併用療法が補助化学療法」とありましたが、「シスプラチン(CDDP)併用療法が補助化学療法」の間違いでした。訂正します。