胃壁の中に広がる特殊な進行癌であるスキルス胃癌に対し、S-1+シスプラチンによる術前補助療法と手術、術後の抗癌剤逐次投与といった集学的治療は、予後の改善に有用であることが明らかになった。3月3日から5日まで新潟市で開催されている第82回日本胃癌学会総会で、横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センターの大島貴氏らが発表した。

 対象は、1995年5月から2008年12月までに、スキルス胃癌で、術前に切除の可能性ありと診断されて集学的治療を受けた93人。このうち1995年5月から2000年6月までの29人には術前補助療法を行わなかった(非NAC群)が、2000年7月から2003年9月までの20人には術前補助療法として低用量FP療法(5FU、シスプラチン。低用量FP群)を、2003年10月以降の44人にはS-1+シスプラチン療法(S-1+シスプラチン群)を行った。

 術後の逐次投与としては、一次治療はS-1単剤、二次治療はパクリタキセル週1回投与またはドセタキセル+シスプラチン、三次治療はイリノテカン+シスプラチンとし、術前補助療法で奏効が認められた場合は一次治療から施行し、奏効が認められなかった場合は二次治療から逐次投与した。

 3群間で患者背景に有意な違いはなかった。なお、手術は遠隔腹膜に転移を認める場合(胃癌取扱い規約第12版のP2/P3)は非切除とした。非切除の比率は、非NAC群で55%、低用量FP群で55%、S-1+シスプラチン群で64%であった。

 その結果、術前補助療法における奏効率は低用量FP群が15.0%、S-1+シスプラチン群は36.4%だった。生存期間の中央値は非NAC群が202日、低用量FP群が322日、S-1+シスプラチン群では506日で、2年生存率はそれぞれ7%、20%、30%であった。

 切除例に限ると、生存期間中央値は非NAC群が271日、低用量FP群が324日だったが、S-1+シスプラチン群では1052日と延長した。2年生存率はそれぞれ10%、28%、58%だった。

 さらにS-1+シスプラチン群の生存期間中央値を、根治度別に比較したところ、根治度A、B(8人)は1570日、癌の遺残が認められた根治度C(8人)でも680日と良好な結果であり、非切除(28人)では364日だった。

 以上のことから演者らは、「S-1+シスプラチンによる術前補助療法と術後抗癌剤逐次投与を組み合わせた集学的治療は有用である」とした。またS-1+シスプラチン群で予後の改善が見られた理由について、大島氏は「S-1は血液腹膜関門を通過することが確認されている。S-1の腹膜播種への効果が予後に影響したのだろう」と考察した。