日本胃癌学会は現在、胃癌治療ガイドラインの改訂作業を進めている。昨年の総会で改訂第3版案が発表されたが、その後の議論を踏まえて、新たな改訂案が作成された。3月3日から5日に新潟市で開催されている第82回日本胃癌学会総会のコンセンサスミーティングで、治療アルゴリズムの採用や推奨する化学療法など、新改訂案の内容が発表された。またアンサーパッドを使った参加者アンケート調査では、推奨されている適応を超えてS-1が幅広く使用されている現状がうかがえた。

 今回の改訂は、胃癌取扱い規約の改訂に合わせて行われ、胃癌取扱い規約とガイドラインの役割分担を明確にするため、胃癌取扱い規約に記載されていた「治療」の内容は全面的にガイドラインに移された。なお、胃癌取扱い規約は3月3日付けで第14版が発刊された。

 ガイドラインは推奨治療と臨床研究治療の2つに分類されており、第2版では「日常診療におけるStage分類別の治療法」と「臨床研究としてのStage分類別の治療法」がそれぞれ表にまとめられていた。しかし、臨床研究治療が推奨治療と混同されやすいことから、改訂第3版では推奨治療だけをStage別の表として記載した。また、今回から推奨治療のアルゴリズムも掲載した。臨床研究治療には、早期胃癌に対するESD(拡大適応)、腹腔鏡下胃切除術、術前補助化学療法、S-1以外の術後補助化学療法などがあり、別章を設けて各治療法の解説が記載された。

 推奨治療には新たに、2期/3期に対するS-1術後補助化学療法と、進行再発胃癌に対するS-1とシスプラチン併用が加わった。S-1による術後補助化学療法の有効性はACTS-GC試験で明らかになったわけだが、試験は胃癌取扱い規約第13版の2期/3期を対象としていた。ところが第14版では進行度分類が変更されたため、旧分類の2期/3期と新分類の2期/3期では対象者に違いが出る。そこで癌研究会有明病院の佐野武氏が癌研究会データベースにある5608人について分析し、その結果から、S-1術後補助化学療法の適応は2期/3期だが、「pT1およびT3-SS/N0を除く」との但し書きが治療アルゴリズムに明記された。

 なお、会場参加者のアンケート調査では、術後補助化学療法として、T1N+症例に「S-1を投与する」が半数を占め、旧分類の4期に対しても6割がS-1を投与すると答えた。また、二次治療は原則として一次治療で使用しなかった薬剤を使用することが奨められているが、2割が「S-1を継続する」と答えた。

 今回のガイドライン改訂では、リンパ節郭清も大きな改訂ポイントだ。胃癌取扱い規約でTNM分類が導入され、解剖学的分類から転移個数による分類に移行した。それに伴い、ガイドラインも占居部位ごとのリンパ節郭清範囲ではなく、術式別にD1/D2が定義された。会場のアンケート調査では80%がこの術式別の定義に賛成の意を示した。

 また、腹腔鏡下胃切除術は、参加者の88%が「自分の施設で行っている」と答え、「標準治療の1オプションとすべき」とする意見が65%を占め、現在の「臨床研究としての治療」に賛成した29%を上回った。また内視鏡的切除(EMR/ESD)も「行っている」が95%で、拡大適応基準をガイドラインに導入する場合、未分化型癌もしくはSM1を除くとする意見が8割を占めた。

 当初、胃癌治療ガイドライン第3版は胃癌取扱い規約と同時に発刊する予定だった。コンセンサスミーティングでの意見などを集約して、6〜7月には発刊される見込みだ。