TS-1+シスプラチンCDDP術前化学療法NAC)は安全に施行でき、特に高度リンパ節転移例で治療が奏効し根治切除ができた場合は良好な遠隔成績が期待できることが示された。 3月4〜6日に東京都で開催された第81回日本胃癌学会総会の特別企画「胃癌化学療法コンセンサス1―術前化学療法」において、新潟県立がんセンター新潟病院外科の藪崎裕氏が報告した。

 藪崎氏らは、2000年10月以降、外来化学療法が可能で奏効率が高いTS-1+CDDPによるNACを施行してきた。投与方法は、TS-1(80mg/m2/日)を3週間投与、2週間休薬とし、治療8日目にCDDP60mg/m2を投与する。

 これまでにこの方法でNACを施行したのは、高度進行胃癌患者232人(男性159人、女性73人、年齢中央値68歳)。対象中には83歳の高齢者、PS 2(19人)、臨床所見(c)による第3群リンパ節までの転移(cN3、54人)、肝転移(cH1、21人)、腹膜転移(cP1、42人)、ステージ(cStage)IV(129人)などが含まれる。

 術前化学療法のコース数中央値は2(1〜10)コースで、術前化学療法施行期間中の在宅率は86%で、QOLの維持が可能であった。全体の抗腫瘍効果は最終的に58.3%であった。

 グレード3以上の有害事象は、貧血6.0%、好中球減少5.2%、血小板減少2.6%などで充分に対応可能なものであった。治療関連死亡(TRD)は認められなかった。

 この232人は半数以上がステージIVという進行症例であったが、生存期間中央値(MST)は24.5カ月、5年生存率32.7%という結果が得られた。この対象に関する多変量解析では、総合所見(f)による肝転移(fH1)や腹膜転移(fP1)、奏効率が予後因子として挙げられた。

 しかし、本対象の成績がどの程度であるかの判断は難しいため、藪崎氏らは、腹部大動脈周囲リンパ節(No.16)転移を認める症例または第2群リンパ節転移を認める症例について、TS-1+CDDPをNACで投与したJCOG0405の試験対象53人と、新潟県立癌センター新潟病院の25人を比較した。その結果、両群間で奏効率などに大きな差は認められなかった。また、8.0cmを超えるtype3またはtype4について、JCOG0210の対象50人と同院の57人を比較しても、顕著な差はみられなかった。

 そこで232人の対象から遠隔転移(cM)0、cP0、cH0、PS 0〜1、20〜75歳、未治療で絞り込みを行うと、142人となった。この中にはcN3が22人、腹腔細胞診で癌細胞を認める(CY1)29人、cStage IVの49人が含まれる。切除できたのは133人(93.7%)で、根治度Cが31人、fStage IVが47人という結果であった。術後合併症も充分に対応可能なものであった。142人の MSTは51.4カ月、5年生存率は46.6%であった。この対象に対する多変量解析では根治度と奏効率が予後因子として挙げられた。

 藪崎氏は「TS-1+CDDPによるNACは経口摂取可能例に限定されるが、重篤な有害事象が少なく安全で奏効率が高い治療」としながらも、全生存期間の延長に関する有効性についてはJCOG0501の結果を待つ必要があるとしている。さらに「TS-1単剤による術後補助化学療法において効果が認められなかった再発高リスク群に関しては、TS-1+CDDPによるNACのみでは遠隔成績を改善しない可能性もあり、3剤併用や分子標的剤、さらには放射線療法を考慮する必要があると考えられる」と話した。