胃切除後の早期経口摂取には合併症を発症しないことが必須であり、術後合併症以外の経口摂取の遅延には医師の判断による場合も多いことから、今後の判断基準の見直しが必要と考えられる。3月4日から6日に東京で開催された第81回日本胃癌学会総会のポスターセッションで、筑波大学消化器外科の稲川智氏、田村孝史氏が報告した。

 胃切除術後の早期経口摂取に関する基準は、腸管麻痺や縫合不全などの術後合併症の観点から存在しない。稲川氏らは、胃癌患者における胃切除後の早期経口摂取の安全性についてレトロスペクティブに検討した。

 対象としたのは2006年7月〜2007年12月に、胃癌に対し胃切除術が施行された患者100人。検討項目は、年齢、性別、PS、術前BMI、術前合併症、進行度、手術術式、手術時間、出血量、根治度、術後合併症、術後在院日数とした。術後経口摂取のクリニカルパスは、術後1日目に経鼻管抜去と水分摂取、2日目にliquid diet(商品名:ラコール)摂取、3〜4日目に3分粥摂取開始と定義し、パスが可能であったパス適応群(A群)65人(年齢中央値68歳)と、パスが不可能であったパス非適応群(B群)35人(同74歳)を比較検討した。

 年齢はA群がB群より有意に若く、術前BMI、進行度、手術時間、出血量、術後合併症にも有意差を認めた。さらに術後在院日数中央値は、A群は9(6〜62)日、B群は11(7〜164)日で、A群で有意に短かった。

 A群でパスを完遂したのは56人(56%)で、非完遂となった9人(9%)の内訳は、発熱3人、腸閉塞2人などであった。A群の完遂群と非完遂群で有意差を認めた項目は、術後在院日数中央値であった。

 B群の3分粥開始時期中央値は6(5〜21)日で、開始の遅延因子は腸閉塞などの術後合併症(40%)や医師の判断(60%)であった。

 今回の検討から、胃癌術後の早期経口摂取は可能と考えられた。パスが非完遂あるいは非適応の理由の多くは術後合併症であり、パス完遂群では全例合併症を認めなかった。また、パス逸脱症例中には術後合併症を認めない、医師の判断による症例も60%含まれる結果となり、稲川氏は「今後の判断基準の見直しが必要と考えられる」と話していた。