日本胃癌学会はこのほど、胃悪性リンパ腫の診断法・治療法をまとめた「胃悪性リンパ腫の診療手引き」案を作成し、同学会ホームページ(http://www.jgca.jp/)で公開した。胃悪性リンパ腫のうち、頻度の高いMALTリンパ腫と、びまん性大細胞B型リンパ腫の診断・治療法が記載されている。3月4〜6日に東京で開催された第81回日本胃癌学会総会のコンセンサスミーティング「悪性リンパ腫」で、その内容について議論され、一部加筆が求められた。7月ころまでに、加筆、修正して確定版を掲載する予定という。

 胃の悪性リンパ腫の治療には、以前は外科切除が行われていたが、化学療法や放射線療法の有効性が明らかになる中で、非外科的な治療が中心となってきている。ただエビデンスはまだ確立していないため、今回はガイドラインではなく、あえて「手引き」とされた。現在でも外科手術を第一選択としている施設があり、この手引きを通して、一般臨床医にも胃悪性リンパ腫への理解を広めるのが狙いだ。

 胃悪性リンパ腫の約40%を占めるMALTリンパ腫は、ヘリコバクターピロリ(H.ピロリ)感染によるリンパ濾胞性胃炎が主な発症原因とされている。そのため限局期のMALTリンパ腫に対してはH.ピロリ除菌が治療の第一選択である。

 国立がんセンター東病院内視鏡部の土井俊彦氏は、胃原発限局期MALTリンパで除菌治療を行った132人の治療成績を報告し、追跡期間中央値84カ月で5年生存率は98%に上ったとした。日本ヘリコバクター学会のガイドラインでもMALTリンパ腫の治療には除菌が推奨されているが、現在は保険適応の対象にはなっていない。

 このように、胃MALTリンパ腫における除菌治療の奏効率は高いが、11番染色体と18番染色体の転座によるAPI2とMALT1の遺伝子異常(融合遺伝子)が認められる場合は、除菌治療に反応しない。手引きには、「API2−MALT1融合遺伝子の有無を可能な限り検索する」と記載されている。しかし、どの段階で遺伝子検査を行うべきかは明記されていない。この点について会場から質問があり、診断として検査を行うのか、除菌治療で無効だったときに行うのかについて、今後検討し、加筆するよう求められた。

 除菌治療が反応しない場合や除菌後に遺残がある場合は、放射線療法が行われる。化学療法は、あくまでも放射線療法が行えない場合か、進行期の胃MALTリンパ腫が対象である。福岡大学筑紫病院内科第二の鈴宮淳司氏は、「胃MALTリンパ腫を含め、進行の遅いリンパ腫(indolent lymphoma)は化学療法では治癒しない。リツキシマブ併用が期待されているが、長期予後はまだ不明である」と述べ、「限局期MALTリンパ腫に化学療法を第一選択にしないように」と強調した。

 一方、進行期のびまん性大細胞B型リンパ腫(DLBCL)の治療は、リツキシマブとCHOP療法(シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾロン)の併用(R-CHOP療法)が標準治療になっている。限局期のDLBCLに対してはCHOP療法と放射線療法の併用が基本とされるが、実際はR-CHOP療法と放射線療法の併用が行われることが多いという。ただし、適切な照射量(30G〜40Gy)についてはコンセンサスが得られていない状況で、その点についても手引きに加筆する予定だ。