「SEC11A」「olfactomedin 4」などの遺伝子胃癌の悪性度に関与しており、病理検体から予後を予測する上で有用であることが分かった。広島大学分子病理学の大上直秀氏と安井弥氏ら研究グループが、第81回日本胃癌学会総会のシンポジウム「病理学と臨床の接点」で発表した。「olfactomedin 4」は「REG4」と組み合わせることで、病期I期の胃癌でも半数が陽性となり、高感度の血清マーカーとして臨床応用できるという。

 研究グループはこれまでに、網羅的な遺伝子発現解析法であるSAGE(Serial analysis of gene expression)法を用いて、胃癌に特異的な分泌たんぱく質をコードするMIA、MMP10、REG4を報告してきた。進行胃癌におけるMIAの発現は、分化型で31%、未分化型でも31%、MMP10の発現は分化型で46%、未分化型で42%にみられ、いずれも予後を悪くする因子であることが示されている(p=0.0001)。

 一方、REG4は分化型では20%、未分化型では43%に認められ、REG4の発現と予後には関連性は見られないが、健常人と胃癌患者との比較から、血清腫瘍マーカーとして有用であり、特異度は99%、感度は36%と報告された。

 olfactomedin 4(OLFM4)は、カドヘリンやレクチンなどと結合して、アポトーシスや細胞接着を制御するといわれている。研究グループの解析では、胃癌167症例のうち94症例(56%)でOLFM4の発現が認められた。OLFM4は胃癌のほか、大腸癌、肺癌、乳癌でも発現しているという。

 臨床病理学的な分類で比較したところ、深達度が浅い症例(T1)、病期が早い症例(ステージI/II)でOLFM4の発現が顕著に見られた。分化型の症例でもOLFM4の発現が認められ、OLFM4陽性の患者のほうが陰性の患者よりも有意に予後が良好であることがわかった(p=0.0067)。

 また健常人との比較で、OLFM4は血清マーカーである可能性も示唆された。特異度は95%、感度は31%だった。さらにOLFM4をREG4と組み合わせると、病期I期の患者(60人)の52%で発現が見られたが、腫瘍マーカーであるCEAとCA19-9の組み合わせでは7%と低発現であった。このことから、研究グループは「OLFM4は予後良好因子および血清マーカーとして有用である」とした。

 さらに研究グループは、SAGEデータの解析から、胃癌で発現が亢進していた遺伝子と、すでに胃癌あるいは癌の発生や悪性度と関連していることが知られている遺伝子の計394種類について分析を行った。その結果、SEC11A(シグナルペプチターゼ複合体 18kDa;SPC18)という遺伝子と、癌の浸潤や転移に関与するといわれているMMP7で、発現量が病期の進行と相関しており、SEC11Aは40%の胃癌で発現が亢進していた。

 癌におけるSEC11Aの機能はまだ明らかでないが、細胞株ではTGF-αやEGFの分泌に関連していることが示され、研究グループは「SEC11Aは予後不良因子と予想される」と述べた。