進行胃癌に対する標準治療は手術+S1による術後補助療法であるが、胃壁の中に広がる特殊な進行癌である「スキルス胃癌」で、腹膜転移を伴う場合の治療法は確立していない。JCOG (日本臨床腫瘍研究グループ)胃癌外科グループで治療された患者の予後調査で、腹膜転移のあるスキルス胃癌でも、手術を先行した患者が8割以上を占め、術後補助療法を行った患者のほうが手術単独よりも生存期間が延長することが明らかになった。第81回日本胃癌学会総会で、神奈川県立がんセンター消化器外科の吉川貴己氏らが発表した。

 2004年1月1日から12月31日の1年間に、JCOG胃癌外科グループの30施設で治療された、根治的切除が可能な4型(びまん浸潤型)、または腫瘍径8cm以上の大型3型(潰瘍浸潤型)で、腹腔洗浄細胞診陽性(CY1)または腹膜転移陽性(P1)の患者121人を対象とした。

 調査の結果、121人の生存期間中央値は16.3カ月で、1年生存率は62%、2年生存率は33%、3年生存率は22.5%だった。微小転移の状態によって比較したところ、腹腔洗浄細胞診陽性の患者(P0CY1)64人では生存期間中央値は18.6カ月、微小な腹膜転移のある患者(P1CY0)24人では16.2カ月、腹腔洗浄細胞診陽性で腹膜転移を有する患者(P1CY1)33人では12.9カ月だった。3年生存率はそれぞれ24.9%、20.8%、19.4%であった。

 次に、初回治療が外科手術だった患者(99人)と化学療法だった患者(22人)で比較したところ、外科手術群における生存期間中央値は17.2カ月、化学療法群は13.5カ月で、外科手術群のほうが生存期間は延長していたが、2群間で有意差は認められなかった(p=0.629)。

 手術を行った患者のうち、術後補助療法を行った患者(77人)と手術単独の患者(22人)を比べると、術後補助療法群の生存期間中央値は17.9カ月、手術単独群は12.4カ月で、有意差はなかったが、術後補助療法によって生存期間が延長する傾向が示された(p=0.101)。3年生存率はそれぞれ23.3%、9.5%だった。

 また、術後補助療法としてS-1投与を受けた患者(47人)の生存期間中央値は16カ月と、手術単独群(22人)より生存期間は延長していた(p=0.203)。さらに、術前補助療法としてS-1とシスプラチン投与を受け、その後、手術をした患者(13人)における生存期間中央値は16.3カ月だった。

 多変量解析では、化学療法のみが生存延長に寄与する因子であることが示された(ハザード比は0.445、p=0.023)。

 これらの結果から、「微小な腹膜転移を伴うスキルス胃癌では、まず切除し、術後S-1を行う治療がJCOGでのcommunity standardだった」とし、術前補助療法については、「試験的治療として、臨床試験で評価されるべきである」と述べた。

 現在、根治切除可能で腹膜転移のない大型3型もしくは4型胃癌を対象に、術前S-1/シスプラチン療法+手術+術後S-1療法を、手術+術後S1療法と比較するフェーズ3臨床試験「JCOG0501」が進行している。この試験に、微小な腹膜転移を伴う患者(P0CY1、大網内P1)を組み込むため、プロトコールを改訂している段階という。