「社会とのかかわりを重視し、胃癌に責任を持つ学会に」―3月4日から6日に東京で開催された第81回日本胃癌学会総会で、こんな提言が示された。これは、「学会のあり方―10年の評価と提言」と題した特別企画セッションで、東京大学医学部消化管外科の瀬戸泰之氏が発言したもの。

 瀬戸氏は、胃癌学会の評価すべき業績として、まず「ガイドラインの作成」を挙げた。医師用のガイドラインに加え、一般用のガイドラインが作成されたことには大きな意義があるという。この一般向けガイドラインには、手術時のリンパ郭清の範囲や胃切除後の再建などについての分かりやすい図表が掲載されているため、患者と家族の理解を得る上で有用なツールになっている。

 英文学会誌「Gastric Cancer」誌の刊行も、世界に向けての発信の場が作られたという点で評価に値するという。2007年からはインパクトファクターもついた。

 一方、達成できていない点として、国内の胃癌の全体像を把握しきれていないことを指摘した。この点については、登録システムが再開されたばかりであり、今後の発展に期待が寄せられるところだ。

 瀬戸氏は、10年後の目標として、「社会とのかかわり」を挙げた。胃癌治療成績の変遷をみると、同一ステージにおける治療成績は着実に向上し、胃癌罹患率も年代を追って低下している。しかし、胃癌死亡率は、10万人当たりの数字で1955年と2006年を比較すると、男女ともほとんど低下していないという。

 胃癌の年代別死亡率をみると、男女とも90歳代の数字が高く、これが胃癌死亡率が低下しない理由と考えられる。そのため、高齢化社会において、高齢者の胃癌にどのように対応していくかは大きな課題になる。医療経済面の問題もあり、「胃癌学会として社会に対して何らかの行動をとる必要がある」(瀬戸氏)とした。

 瀬戸氏は、学会会員数の増加と学会のステータスの向上への努力が必要な点を指摘、「胃癌に責任を持つ学会であることが重要」と強調した。