胃癌手術の術式や術後化学療法などの標準化は進んでいるが、術後の評価については大きな問題であるにもかかわらず、まだ統一的な手法はない。消化管症状に特異的な尺度、Gastrointestinal Symptom Rating ScaleGSRS)を用いた評価は、単独では食生活や栄養状態を確実に反映することはできないが、「共通のものさし」として術式別の消化器症状を評価することは有用と考えられるという。3月4〜6日に東京都で開催された第81回日本胃癌学会総会のシンポジウム「胃癌術後評価法の標準化に向けて―術式をどう評価し、術後の病態をどう見るか―」において、東京女子医科大学東医療センター外科の勝部隆男氏が発表した。

 胃癌手術に対する評価では、治癒切除が行われているかどうか(根治度)とQOLが重要である。一方、胃癌手術後の機能評価として最も重要なのは、胃切除後のQOLである。胃切除後QOLには、消化器症状、食生活、栄養状態が影響し合う。勝部氏らは、胃切除後QOLの評価として、消化器症状としてGSRS、食生活はアンケート調査、栄養状態は体重の変動や血液検査値で検討した。

 GSRS調査票は、過去1週間の体調について、酸逆流、腹痛、消化不良、下痢、便秘に関する質問事項を含む。点数により、1点の「ぜんぜん困らなかった」から、7点の「がまんできないくらい困った」まで、7段階に分類される。1〜2点は無症状、3点以上は有症状と考えられる。これから全体の平均スコア、症状別平均スコアを算出する。また、食生活のアンケート調査では、食事量の変化や食事にかける時間、間食の有無などを取り入れた。

 対象としたのは、術後1年以上経過し、症状の安定した早期胃癌患者89人(幽門側胃切除(DG)50人、幽門保存手術(PPG)18人、胃全摘(TG)15人)。DG群は男性34人、女性16人、手術時年齢63.0歳、PPG群はそれぞれ9人、9人、66.0歳、TG群は10人、56人、5.0歳であった。根治度はAまたはB、ステージはI またはII、化学療法は未施行の例とした。手術後経過年数は5年7カ月〜6年9カ月であった。

 GSRSの全体スコアは、TG群1.81、DG群1.52、PPG群1.84となり、差は認められなかった。有症状の比率をみると、それぞれ33.3%、30.0%、38.9%で、術式による大きな差はなかった。胃癌における胃切除後QOLを術式別に検討した結果、GSRSでは、PPG群で腹痛、消化不良の頻度が高かった。食生活では差が認められなかったが、体重減少はTG群で減少が顕著であった。

 術式別にGSRSと食生活、栄養状態との関連を検討した結果、TG群では、酸逆流、腹痛が有症状と判断された人では、食事量を2/3以上摂取している人の比率が明かに少なかった。DG群では消化不良の有症状がある人と体重の減少が関連した。PPG群では酸逆流、腹痛、下痢と間食、空腹感が関連し、酸逆流が強い人および腹痛や下痢がある人は間食をしていなかった。

 勝部氏は、「共通のものさしとして、GSRSによる術式別の消化器症状の評価は有用と考える」と話した。