HER2陰性乳癌に対する術前化学療法として、パクリタキセル週1回投与(wPTX)にカルボプラチンを併用投与し、その後CEF療法を施行する群では、標準治療であるwPTX後CEF療法を施行する群に比べ、病理学的完全寛解(pCR)が有意に多いことが多施設ランダム化フェーズ2試験の結果示された。効果は特にトリプルネガティブ例において顕著だった。6月27日から浜松で開催された第21回日本乳癌学会総会で、愛知県がんセンター中央病院の安藤正志氏が発表した。

 現在の乳癌治療におけるカルボプラチン(CBDCA)の位置づけは、トリプルネガティブの進行・再発例、あるいはHER2陽性の進行・再発例に対して、前者は治療効果増強を狙ってタキサンまたはゲムシタビンとの併用で、後者はトラスツズマブ+タキサンとの併用で用いられる。術前化学療法としては、HER2陽性例に対するトラスツズマブ+タキサンとの併用や、トリプルネガティブ例に対するタキサン併用、また、術後化学療法では、HER2陽性例に対するトラスツズマブ+タキサン併用で用いられている。

 今回、安藤氏らは、カルボプラチンの臨床的有用性を評価する目的で、10施設共同のランダム化フェーズ2比較試験を計画した。手術可能なHER2陰性乳癌に対する術前化学療法として、標準治療であるwPTX後CEF療法と、カルボプラチン3週おき1回+wPTX後CEF療法の群で、病理学的完全奏効率(pCR率)を比較検討する試験だ。

 これまでの報告によると、HER2陰性乳癌における術前化学療法(アントラサイクリン→タキサン)のpCR率は15〜20%であることから、pCR率を標準治療群15%、試験治療群30%と想定し、片側検定により必要症例数を220例と設定した。2010年3月から2011年9月に、研究費の不足により当初予定を下回る181例が登録されたが、統計学的には問題のない範囲だった。

 対象は、臨床病期II-IIIA期の組織診で浸潤性乳癌が診断された初回治療例で、乳腺超音波で腫瘍径2.1cm以上、または2.1cm未満の場合は超音波により腋窩リンパ節転移が陽性であった症例。また、HER2陰性(IHC:0、1+、またはFISH陰性)、原発巣のホルモン受容体の状況は問わず、ECOG PSが0-2で適切な臓器機能を有する18-70歳の症例とした。

 治療レジメンは、術前化学療法において、標準治療であるパクリタキセル(80mg/m2、週1回12サイクル)投与後 CEF療法(シクロホスファミド500mg/m2、エピルビシン100mg/m2、5-FU 500mg/m2、いずれも3週おき1回4サイクル)を施行する群(P群)と、パクリタキセル(80mg/m2、週1回12サイクル)+カルボプラチン(AUC5 3週毎4サイクル)投与後に同様のCEF療法を施行する群(CP群)とした。その後、患者は、手術、および必要に応じて放射線療法やホルモン療法(TAMまたはAI)を受けた。

 試験の主要評価項目は、両群における病理学的完全奏効(pCR)率で、pCRの定義は、病理学的に腋窩リンパ節転移陰性で、原発巣における癌細胞の壊死および完全消失、または乳管内にのみ癌細胞が残存、のいずれかを満たすものとした。副次評価項目は、無再発生存期間(DFS)、臨床的奏効率(cCR)、有害事象、乳房温存率とした。

 登録患者181例を2群に無作為に割り付けた。年齢中央値は両群ともに47歳、50歳未満はP群66%、CP群59%、閉経前はそれぞれ59%、69%だった。病期は、IIA/IIB/IIIAがそれぞれP群30%/54%/14%(IIIC 2例含む)、CP群35%/46%/19%。病理学的悪性度はG1/2/3がそれぞれP群14%/39%/47%、CP群18%/33%/49%、腫瘍径中央値は両群ともに4cmで、臨床的腋窩リンパ節転移陽性の患者はP群67%、CP群64%だった。

 ホルモン受容体の有無については、両群とも同率で、ER−PgR−(トリプルネガティブ)が42%、ER+/PgR+が41%、ER+/PgR−が12%、ER−/PgR+が2%だった。

 各群で1例ずつが治療を拒否したため、P群91例、CP群88例となった。

 術前化学療法完遂はP群64例、CP群54例。治療中止理由は、「有害事象」がP群6例に対してCP群は29例と、CP群は有害事象による治療中止の割合が顕著に高かった。P群では有害事象と関連が否定できない患者拒否が5例、患者拒否が1例あった。また、P群ではパクリタキセル投与中に8例、CEF療法中に5例の増悪がみられたのに対し、CP群ではCP投与中3例、CEF療法中2例だった。

 臨床的治療効果の評価においては、完全奏効(CR)/部分奏効(PR)を足した割合がP群で70%、CP群で85%であり、CP群で良好だった(CR/PR/病勢安定(SD)/病勢進行(PD)はそれぞれ、P群33%/37%/6%/4%、CP群46%/39%/7%/8%)。その後の乳房手術は、乳房切除術、乳房温存術、腋窩リンパ節廓清で2群間に大きな差はなかった(P群/CP群それぞれ、33%/39%、65%/61%、70%/67%)。

 主要評価項目であるpCR率では、P群17.6%(10.4-27.0%)に対し、CP群では31.8%(22.3-42.6%)に達し、CP群が有意に優れていることが確認された(片側p値=0.0166)。ただし、Per Protocolを対象とした場合には、P群 24.2%(15/62例)とCP群28.0%(14/50例)で差はなかった。判定は病理中央診断にて実施した。

 また、部分集団ごとのpCR率の特徴を検討した結果、病理学的悪性度のグレードが高いほど、pCR率が高く(グレード1/2/3:P群0%/5.7%/32.6%、CP群12.5%/34.5%/37.2%)、トリプルネガティブではCP群が優れていることが確認された(ER−PgR−ではP群26.3%/CP群62.2%、ER+/PgR+では8.1%/5.6%、ER+/PgR−では14.3%/15.4%、ER−/PgR+では50.0%/50.0%)。ERのみで評価した場合、ER陰性症例でカルボプラチンがより奏効する可能性が示唆された(ER−ではP群/CP群27.5%/61.5%、ER+では9.8%/8.2%)。

 両群におけるグレード3以上の有害事象は、好中球数減少がP群38.5%(投与中に発症9.9%)、CP群65.9%(58.0%)、発熱性好中球減少がP群15.4(0%)、CP群20.5%(2.3%)、貧血がP群1.1%(0%)、CP群19.3%(15.9%)、血小板減少がP群0%、CP群1.1%(1.1%)など。CP群はP群と比較して骨髄抑制が強く認められた。

 安藤氏は「HER2過剰発現のない乳癌の術前化学療法において、カルボプラチン+wPTX後CEF(CP群)は、wPTX後CEF(P群)と比較して、pCR率は有意に向上した。トリプルネガティブ例において、CP群のpCR率がさらに高い傾向が認められた。CP群では、P群よりも、好中球減少、貧血が強く認められ、CP群の完遂率は62.5%で、P群73.6%よりも低かった」と結論付けた。

 また、「術前化学療法にカルボプラチンを追加することで効果が得られやすい患者を特定するため、現在、国立がん研究センターで試験が行われている」と付け加えた。