エストロゲン受容体(ER)が1%以上発現している場合は、術後内分泌療法を実施することが推奨されているが、ERが50%未満と低発現である乳癌患者の再発率はER高発現患者と比べて高く、化学療法の追加を検討することが必要であると示唆された。大阪済生会千里病院外科の吉岡節子氏が、6月27日から29日まで浜松市で開催された第21回日本乳癌学会学術総会で発表した。

 2009年のSt.Gallenコンセンサス会議で示された治療方針では、ERの発現が1%以上だった患者については術後内分泌治療を行うことが推奨されている。だが、従来「陰性」と判定されてきたER1%以上10%未満の低い発現状態では、治療効果が限定的となる可能性を考慮して、化学療法を併用するケースが多い。

 今回、吉岡氏らは、ER低発現乳癌の術後薬物療法と再発状況について検討した。
 
 対象は、同院で乳癌手術を実施し、病理組織学的診断でER、プロゲステロン受容体(PgR)、HER2、核異型度が評価されている患者。原発巣の免疫組織化学染色でERが1%以上50%未満(低発現)となった62例と、ERが50%以上(高発現)と診断された356例。年齢は57-61歳。ER 1%以上の症例に対する術後内分泌療法は2009年から導入され、また術後補助療法としてのトラスツズマブ投与は保険適応後から導入された。

 ER1%以上50%未満の患者の内訳は、1%以上10%未満が29例(6.9%)、10%以上50%未満が33例(7.9%)だった。患者背景を比べると、ER10%以上50%未満の患者ではPgR低発現、核異型度2/3が多く、ER高発現群よりもER1%以上10%未満群に類似していた。

 HER2−症例におけるER低発現群(1%以上50%未満)の割合は11.2%、高発現群(ER50%以上)の割合は88.8%。HER2+症例における割合はそれぞれ35.5%、64.5%だった。

 ER低発現群の再発率は、ER高発現群よりも高かった。HER2−症例のうちER低発現群の再発率は22.5%、高発現群では6.6%、HER2+症例ではそれぞれ50%、15%で、HER2+かつER低発現群では半数が再発した。

 ER発現状態別に無病生存(DFS)率を見ると、ER50%以上群に比べてER1%以上10%未満群はやや不良だったが、ER10%以上50%未満群が最もかつ有意に不良で、再発が多く認められた(p<0.001)。

 ERとHER2の発現状態を組み合わせたDFS率はER低発現かつHER2+群で最もかつ有意に低く、再発が多く認められた(p<0.001)。

 また、HER2−症例において、ER発現と化学療法の有無別にDFS率を検討した結果、ER低発現かつ化学療法未実施群で最もかつ有意に不良だったことから(p=0.014)、ER低発現かつHER2−の症例は化学療法の効果が期待できる群と考えられた。

 さらに、HER2+患者のうち、化学療法にトラスツズマブを併用した群のDFS率は、化学療法のみの群と比べて再発が少ない傾向が確認されたが、有意差はなかった。

 再発巣を再生検した11例について、ER、PgR、HER2発現状態の変化を見たところ、ER低発現群6例のうち5例が再発巣でER陰性化した。一方、ER高発現群(5例)では、1例を除き、ERステータスは変化しなかった。その1例についても、再々発巣でERが再陽性化した。PgRは全ての再発部位で陰性化したほか、HER2は1例で陰性化した。

 これらの結果から吉岡氏は、「従来、ER陰性と定義されてきたER1%以上10%未満だけでなく、ER10%以上50%未満でもER50%以上より再発率が高かった。また、ER陽性HER2陽性だがER低発現では半数が再発していた。これらの結果から、ER低発現例には化学療法の追加が、HER2陽性例ではトラスツズマブが必要と考えられる」と語った。

 さらに吉岡氏は、「ER低発現群では再発巣の陰性化が起こりやすいと考えられた。再生検による再発巣の評価は有効だが、、ER陰性時の内分泌療法やトラスツズマブ中止については、十分な検討が必要」と指摘した。