転移乳癌に対するパクリタキセルベバシズマブ併用投与は、奏効例は少なかったものの病勢安定(SD)を維持できる症例が多く、また治療ラインの早期で用いた場合ほど効果が高い可能性が示唆された。がん研有明病院総合腫瘍科の河合佑子氏が、6月27日から29日まで浜松市で開催された第21回日本乳癌学会学術総会で発表した。
 
 日本においてベバシズマブ+パクリタキセル併用療法は、手術不能または再発乳癌に対する適応で2011年に承認されている。だが米国では、承認後の追加試験で、無増悪生存期間(PFS)の改善は数カ月だったこと、OSを改善しないこと、重篤な有害事象の発現率が有意に高まるといった理由から、2011年に同療法の乳癌への適応が取り消されている。
 
 今回、河合氏らは、転移乳癌患者へのパクリタキセル+ベバシズマブ併用療法の有効性と安全性について検討するため、同院を受診した乳癌患者を対象に後ろ向きに検討を行った。
 
 対象は、同院で2011年10月〜2013年4月までに治療した転移乳癌患者37人。高血圧症で2剤内服治療中の患者、血栓や消化管潰瘍の既往歴のある患者、肺に空洞性病変がある患者、コントロールされていない脳転移を有する患者は除外した。

 原則として、ベバシズマブは10mg/kgをday1に、パクリタキセルは80mg/m2をday1-8に投与し、2週間隔で静脈内投与した。

 患者の年齢中央値は51歳(範囲:33-73歳)、無再発生存期間中央値は24カ月、手術歴は78%、放射線照射歴は46%、ホルモン療法歴は78%、再発後化学療法レジメン数中央値は3.0(範囲:1-13)、全過程化学療法レジメン数中央値は5.0(範囲:1-15)。転移臓器数は3が41%、2が24%、転移臓器の内訳は骨が62%、肝臓が57%、リンパ節が40%、肺が38%だった。サブタイプは、エストロゲン受容体(ER)陽性かつ/またはプロゲステロン受容体(PgR)陽性かつHER2陰性が81%、ER陰性かつ/またはPgR陰性かつHER2陽性が5%、トリプルネガティブが14%を占めた。

 治療歴は、アントラサイクリン系が86%、タキサン系が70%、カペシタビンが65%、ビノレルビンが46%、エリブリンが46%、ゲムシタビンが22%。

 抗腫瘍効果は、部分寛解(PR)が16%、SDが70%、long SD(6カ月以上のSD)が46%、病勢進行(PD)が14%だった。奏効率(RR)は16%、病勢コントロール率(DCR)は86%、臨床的有効率(CBR、CR+PR+long SD)は62%だった。

 無増悪生存期間(PFS)中央値は30週(範囲:4-65)だった。

 再発後の化学療法レジメン数が3以下の患者(19例)ではPFS中央値が37週間で、レジメン数4以上の患者(18例)の22週間と比べ、有意に延長していた(p=0.005)。

 サブタイプ別のPFS中央値は、ER陽性かつ/またはPgR陽性かつHER2陰性例(30例)が34週間と最も長く、トリプルネガティブ例(5例)が21週間、ER陰性かつ/またはPgR陰性かつHER2陽性例(2例)は評価不能だった。

 また、転移臓器数が3以下の患者におけるPFS中央値は、4以上の患者と比べて有意な延長が確認されなかった。

 グレード3の有害事象は、末梢神経障害が38%、好中球減少が24%、高血圧が22%、蛋白尿が5%だった。グレード3の有害事象で投与中止に至ったのは11%(4例)存在したが、管理可能だった。内訳は消化管出血が2例、末梢神経障害が1例、腎機能障害が1例だった。

 これらの結果から河合氏は、「濃厚な前治療歴を有する転移乳癌に対するパクリタキセル+ベバシズマブ併用療法は、奏効例は少なかったものの、SDを維持できる症例が存在し、有害事象は管理可能だった。HER2陽性例が含まれたことがRR低下に影響した可能性がある。再発後の化学療法レジメン数が少ない症例に対して同療法による治療効果が高かったことから、治療の早い段階で使用することが重要であると考えられる」と強調した。今後は、観察期間を延長するほか、サブタイプ別、補助化学療法の有無などで同療法が有効な集団を検討したいと語った。