「乳癌診療ガイドライン 2013年版」(日本乳癌学会編)が6月27日に発売された。特徴の1つは、日本からのデータ、エビデンスをより重視したこと。6月27日から29日まで浜松市で開催された第21回日本乳癌学会学術総会のガイドライン公聴会において、診療ガイドライン委員会の委員長を務めた国立がん研究センター東病院乳腺・腫瘍内科の向井博文氏が全体方針を解説した。

 日本乳癌学会の診療ガイドラインは、2004年に薬物療法についての初版が、2005年に外科療法、放射線療法、検診・診断、疫学・予防についての初版が発行され、改訂が重ねられてきた。

 2013年版のガイドラインは、2011年版に続き、治療編と疫学・診断編の2部で構成されている。向井氏は本ガイドラインの特徴を4点あげた。

 1つは、日本からのデータ、エビデンスをより重視したことである。向井氏は本ガイドラインの序文の副題を「日本の実情を反映した使いやすいガイドラインを目指して」としている。

 一般的に、ガイドラインはエビデンスの数と質で評価される。しかし、単純に数だけをみた場合、世界における日本のエビデンスの割合は小さくなり、日本人患者の利益とならない可能性がある。日本人女性を対象とした研究結果であれば人種間差や医療環境の違いを配慮する必要がなく、日本からのエビデンスをもっと大切にすべきと考えられる。日本発のエビデンスは優先評価し、推奨グレードや本文の文言に反映させた結果、新たに日本で臨床試験を開始する土壌ができれば望ましい。

 別の特徴として、推奨グレードの決定に際し、エビデンスは重視するものの、画一的な対応はせず、種々の臨床的因子を加味して判断したことがある。また文献検索では、日本医学図書館協会に依頼し、専門家による網羅的文献検索を実施した。

 さらに、Web版に寄せられたコメントは、第三者評価委員会によるプロセスの妥当性のモニターが行われた上で、すべて今改訂に反映させた。

 Web版では7月11日に、2011年版から2013年版に改訂され、会員であればすべて無料で閲覧できる。

 今後、書籍版とWeb版本体は2年間改訂されないが、日常診療を変えるほどの新たなエビデンスが発表された場合は、Web版に掲載される。またパブリックコメントは2年後の改訂版ですべてを反映させる予定である。

 新たな試みも検討されている。1つは日本のガイドラインの海外への発信である。乳癌の治療・診断は世界のガイドラインの間で必ずしも一致していない。方向性は一致していても、国や研究者によりデータの解釈が異なること、Cost/benefit balanceが国や地域ごとに違うこと、自国からの研究結果か否かなどが、不一致の要因となる。向井氏は「日本の乳癌診療ガイドラインをBreast Cancer誌に今年1年かけて英語で掲載したい」と話した。

 もう1つは、ガイドライン評価ツールを意識したガイドラインの作成である。ガイドラインの評価ツールにAGREE IIがあり、このツールによると、より良いガイドラインとするために今後必要な点は、推奨を決定する方法を明確に記載すること、推奨とそれを支持するエビデンスとの対応関係を明確にすることと考えられた。

 最後に向井氏は「私達のガイドラインをさらに良いものに、さらに使いやすいものにできるよう、努力していきたい」と述べた。