乳癌の1次治療としての薬物療法により薬剤性肺臓炎を発症した症例において、その後の標準的な胸部放射線療法が安全に施行できるかを検討するため、がん研究会有明病院と聖路加国際病院が共同で研究を行った結果、軽度の薬剤性肺臓炎の炎症が治まった後での術後胸部放射線療法は安全に施行できる可能性が示唆された。6月27日から浜松で開催された第21回日本乳癌学会総会で、がん研究会有明病院放射線治療部の小口正彦氏が発表した。

 乳癌に対する薬物療法は放射線療法の前に1次治療として実施されるケースが増加しているが、こうした集学的治療には優れた効果がある半面、毒性の複合化の問題も無視できない。

 現時点では、薬剤性肺臓炎後の胸部放射線療法について標準的な放射線療法が安全かどうかを検討した研究は少ない。両施設では、現在まで、薬剤性肺臓炎の急性炎症が治まった後、温存手術後全乳房放射線療法(BRT)や乳房切除後放射線療法(PMRT)を行ってきた。

 そこで、今回、小口氏らは、胸部放射線療法に関する有害反応を遡及的に調査した。

 対象は、2005年3月から2012年5月の間に、乳癌治療で抗癌剤投与後に薬剤性肺臓炎を発症し、その後、術後放射線療法を行った16例。年齢中央値は54歳で、うち3例にアレルギー歴があった。方法は、放射線性肺毒性の指標として照射肺体積(V20)を用い、過去のカルテ調査により薬剤性肺臓炎および放射線肺臓炎の有無を検討した。

 薬剤性肺臓炎を惹起した薬物療法レジメンは、ドセタキセル8例、パクリタキセル4例、ドセタキセル+シクロホスファミド1例、CAF(シクロホスファミド、ドキソルビシン、5-FU)またはCEF(シクロホスファミド、エピルビシン、5-FU)療法が3例。

 薬剤性肺臓炎の症状は、咳嗽(グレード1)8例、呼吸困難(グレード2)4例、発熱(グレード1)10例だった。また、薬剤性肺臓炎のCT 画像では、スリガラス状陰影(GGO)が15例、広範囲な間質性陰影が1例に認められた。薬剤性肺臓炎のステロイド治療については、パルス療法を要した重症例は2例で、内服療法11例、その他(抗菌剤・鎮咳剤など)が3例だった。

 薬剤性肺臓炎の急性炎症が治まった後に施行した放射線療法の方法は、乳房温存術後照射(50-66Gy)が11例、乳房切除術後照射(50Gy)が5例だった。放射線性肺毒性の指標として用いた肺V20の中央値は、乳房温存術後照射で3.6%、乳房切除術後照射で15.5%、全体では7.6%だった。しかし、肺V20がどの程度まで許容されるかは不明としている。

 カルテ調査における検討では、薬剤性肺臓炎の再増悪、および有症状の放射性肺臓炎の発症は1例も認めなかった。治療後、遠隔転移を1例に認めたが、全員が呼吸器症状なく生存しているという。

 これまでの報告と同様に、タキサン系薬剤によって誘発される薬剤性肺臓炎が81%と高率であった一方で、薬剤性肺臓炎は比較的早期に発見されており、パルス療法を要した重症例は12%(2例)であったことも示された。

 少数例での検討ではあるが、軽度の薬剤性肺臓炎の炎症が治まったあとの術後胸部放射線療法は安全に施行できる可能性があると小口氏らは結論付けるとともに、「現在の乳癌治療におけるタキサン系薬剤使用の増加を鑑みると、これからも研究の必要がある」と語った。