乳癌脳転移患者のサブタイプ別に治療成績を解析した結果、luminalタイプの患者では定位手術的照射(SRS)または手術ができる段階で脳転移が診断できれば、生存期間(OS)が延長する可能性が示唆された。一方、HER2陽性患者とトリプルネガティブ患者では、脳転移発見状況や脳局所治療の内容に関わらず、脳転移の早期診断がOSを延長する可能性が低いことが指摘された。6月27日から29日まで浜松市で開催された第21回日本乳癌学会学術総会で、国立病院機構九州がんセンター乳腺科の久芳さやか氏らが発表した。

 これまでの報告では、進行再発乳癌における脳転移なし症例に対して、脳転移あり症例は予後が不良だったが、さらに、無症候性脳転移例と症候性脳転移例においてもOSに有意差がなかったことから、脳転移の早期診断はOSの延長に寄与しないと考えられている。この無症候性脳転移例は約4分の1が単発例で、そのほとんどに全脳照射(WBRT)が行われたが、全例が脳転移以外で死亡している。

 また海外のフェーズ3試験では、単発脳転移患者へWBRT+定位手術照射(SRS)を実施した際のOS中央値は6.5カ月で、WBRT単独療法の4.9カ月と比べOSが有意に延長しており、脳転移患者では局所治療が重要であると考えられている。

 そこで久芳氏らは、乳癌脳転移患者を対象に、脳転移発見時の状況、脳局所治療と予後に関連する因子をサブタイプ別に検討し、脳転移診断の意義を推察した。

 対象は、2001年1月〜2010年12月までに同院で治療した進行再発乳癌患者524例で、脳転移症例はエストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PgR)、HER2蛋白発現の状態、転帰が明らかな脳転移例65人だった。luminalタイプ(ER陽性かつ/またはPgR陽性、HER2陰性)、HER2タイプ(HER2陽性)、トリプルネガティブ(ER、PgR、HER2の全てが陰性)の3つのサブタイプに分類した。

 再発全症例のサブタイプは、luminalタイプが50%、HER2タイプが26%、トリプルネガティブが24%だった。そのうち、脳転移症例ではそれぞれ40%、40%、20%で、再発全症例と比べてHER2タイプの割合が高かった。

 脳転移症例(65例)のサブタイプ別の患者背景に有意差はなく、年齢中央値が56-60歳、症候性脳転移例が77-85%、他臓器転移ありが81-100%、初再発から脳転移までの期間は0.7-1.4年、無病生存期間(DFI、進行乳癌は含まない)は1.7-3.1年だった。

 サブタイプ別に脳転移発見時の脳転移個数を見ると、luminalタイプとHER2タイプは単発で診断される割合が高く、HER2タイプは4個以下で診断される割合が高かった。詳細には、luminalタイプにおいて脳転移個数が1個だった患者は44%、2-4個は10%、5個以上は46%だった。HER2タイプではそれぞれ44%、29%、27%、トリプルネガティブでは23%、23%、54%だった。

 サブタイプ別に脳転移治療法を見ると、SRSまたは手術を行った患者はluminalタイプが46%、HER2タイプが81%、トリプルネガティブが54%で、特にHER2タイプではSRSまたは手術施行例の割合が高かった。WBRTはluminalタイプで42%、HER2タイプで19%、トリプルネガティブで38%だった。

 脳転移後のOS中央値は、luminalタイプが0.8年、HER2タイプが1.8年、トリプルネガティブが0.5年で、HER2タイプは他の2群と比べ有意にOSが長かった(p=0.02)。再発後のOSはそれぞれ2.5年、3.3年、1.6年で、HER2タイプはトリプルネガティブよりも有意にOSが長かった(p=0.02)。

 脳転移治療法別の脳転移からのOS中央値は、luminalタイプではWBRT実施群が0.7年だったのに対し、SRSまたは手術群が1.9年で有意に延長した(p=0.007)。一方、HER2タイプではWBRT群が1.9年、SRSまたは手術群が2.4年、トリプルネガティブではそれぞれ0.3年、1.1年で、統計学的な有意差はなかった。

 全ての解析結果を踏まえ久芳氏は、「luminalタイプはSRSまたは手術が可能であった患者や単発で発見された患者が多く、脳転移からのOSを延長した。HER2タイプは、73%が脳転移4個以内で診断されており、そのため81%の患者がSRSまたは手術を実施していた。一方、トリプルネガティブは初再発から脳転移までの期間、DFIが短い傾向があり、脳転移からのOSが6カ月と最も短かった」と説明。「luminalタイプは、SRSまたは手術ができる状況で脳転移診断ができれば生存期間を延長する可能性が示唆された。一方、HER2タイプとトリプルネガティブは脳転移発見状況や脳局所治療内容に関わらず、脳転移の早期診断が生存期間を延長する可能性は低いと考えられた」と結論付けた。