乳房再発巣における癌幹細胞マーカーALDH1の発現は、HER2やki-67と組み合わせることで予後を予測できる可能性が示唆された。また、原発巣と乳房内再発巣の両方でALDH1を発現していると最も予後が不良で、真の再発を多く含む可能性が高いと考えられた。6月27日から浜松で開催された第21回日本乳癌学会総会で、日本乳癌学会石飛班を代表して岡山大学病院の枝園忠彦氏が発表した。

 癌幹細胞は、自己複製機能と分化能の両方をもつ細胞であり、予後因子として、また治療標的として注目されている。幹細胞マーカーの1つであるALDH1(Aldehyde dehydrogenase 1)の乳癌原発巣および腋窩リンパ節転移における発現が予後と相関すること、およびALDH1陽性細胞では薬物療法に耐性があることはすでに報告されているが、同側乳房内再発巣(IBTR)におけるALDH1を調べた研究はまだない。

 そこで、枝園氏らは、「様々な治療の中で生き残ったIBTRは癌幹細胞を多く含むのではないか」という仮説に基づき、IBTRにおけるALDH1の発現と再発後の予後との相関を検討すること、そしてIBTRにおける真の再発と新病変の鑑別に有用であるかを検討することを目的としてこの班研究を実施した。

 班会議に参加した8施設において患者を収集した。対象は、乳房温存療法後、組織学的に浸潤癌と診断されたIBTR。2008年までにIBTRに対して切除手術が行われており、同時性遠隔転移を伴わなず、両側乳癌ではない症例とした。

 対象者219例の患者背景は、初発手術時年齢46歳、再発手術時51歳、原発腫瘍径中央値2cm(0-6.8)で、病理学的特性では、切除断端陰性が70%、near<5mmが14%、陽性が10%だった。原発腫瘍における受容体の状態はER+ 54%/PgR+ 45%/HER2+ 9%、IBTRではER+ 58%/PgR+ 43%/HER2+ 22%だった。術後補助療法については化学療法36%、ホルモン療法53%、トラスツズマブ2%、術後放射線療法48%、再発までの無増悪生存期間(DFS)は46カ月(2-206カ月)。

 方法は、原発巣およびIBTRにおけるALDH1の発現と予後を検討することとした。ALDH1の発現は免疫染色で比較的容易に特定できる。A:陰性群、B:1+(陽性腫瘍細胞が1-5%)、C:2+(5-10%)、D:3+(10%以上)とした。
 
 その結果、ALDH1の発現率は、原発巣では24%、IBTRでは23%と、ほぼ同等だった。予後との関連についても、原発巣においてもIBTRにおいても、ALDH1発現と全生存率(OS)無病生存率(DFS)、遠隔無病生存(DDFS)との間に有意な相関を認められなかった。

 次に、乳癌のサブタイプ別の検討を試みた。Luminal A(ER+、HER2−、ki-67<14%)、Luminal B(ER+、HER2−、ki67>15%またはER+、HER2+)、HER2 type(ER−、HER2+)、トリプルネガティブの4つに分類したところ、IBTRにおけるALDH1の陽性率は、それぞれ15%、23%、30%、21%だった。

 各タイプ別にALDH1発現と予後の相関を検討した結果、Luminal A、Luminal BではALDH1発現の有無と予後に相関は認められなかったが、HER2 typeではALDH1発現があると有意に予後が不良であることが示された。

 また、IBRTのバイオロジーを明らかにするため、IBTRにおけるALDH1とバイオマーカーの相関を評価したところ、ki-67>15%(69%)との相関が示された(p=0.05)。ER、PgR、HER2に相関は認められなかった。

 そこで、IBRTのALDH1発現とki-67の組み合わせで、再発後の予後との関連性を検討した。ki-67<14%・ALDH1(−)、ki-67<14%・ALDH1(+)、ki-67>15%・ALDH1(−)、ki-67>15%・ALDH1(+)の4グループに分け、再手術後のDFSとの相関を調べたところ、ki-67低値かつALDH1陰性が他のグループと比べて再発後の予後が良好で(p=0.0082)、Ki-67値とALDH1発現を組み合わせることで予後を予測できる可能性が示された。

 最後に、原発巣と再発巣におけるALDH1の発現の一致を評価した。同一の患者の原発巣とIBTRで比較を行った結果、一致率は72%だった。原発巣でALDH1(−)の場合、IBTRで陰性だったグループとIBRTで陽性だったグループの間で予後に差はなかったが、原発巣でALDH1(+)だった場合、再発巣でもALDH1(+)だったグループは再発巣でALDH1(−)だったグループに比べて予後が不良な傾向が認められた。

 以上のことから枝園氏は、「乳房内再発巣におけるALDH1発現は強力な予後因子ではないが、HER2やki-67と組み合わせることで予後予測因子となりうる可能性がある。原発巣と乳房内再発巣の両方でALDH1陽性である症例は最も予後が悪かった。これらは術後の治療を生き残った真の再発を多く含む可能性が高い」としながら、「今後は、ALDH1陽性細胞がどこに潜んでいたのか、また、ALDH1陽性細胞をターゲットとした治療の開発が可能か、という点を検討する必要がある」と結んだ。