乳癌センチネルリンパ節(SN)生検によるSN生検陽性例において、SNにおける制御性T細胞(Treg)の集積数がSN単独転移診断に有効である可能性が示唆された。6月27日から浜松で開催された第21回日本乳癌学会総会で、千葉大学医学研究院の鈴木ティベリュウ・浩志氏が発表した。

 近年、乳癌SN生検は、不要な腋窩リンパ節郭清を避けるT1-2N0乳癌の標準治療として確立してきた。しかし、迅速組織診によるSN生検陽性例では、腋窩リンパ節郭清は避けられない。ACOSOG(American College of Surgery Oncology Group)Z0011試験の報告では、腋窩リンパ節廓清追加の優位性が示されず、今後さらに、非SN郭清を併用しない腋窩ステージングが求められている。

 そこで鈴木氏らは、郭清省略症例の選定のための新しい診断マーカーとして、悪性腫瘍への集積や、乳癌においては主病巣への集積と予後との相関が示されているTregに着目し、Tregによる腋窩ステージングの可能性を検討した。

 最初に臨床病理学的検討として、報告されている非センチネルリンパ節(NSN)転移予測因子ついて、鈴木氏らの施設における過去10年の症例を対象に検討を行った。同施設ではSN転移陽性例が175例、うちNSN(+)例が25例だった。その結果、NSN転移予測因子として、脈管浸潤、節外浸潤、SN転移個数、SN転移径が有意な因子として見出された。

 続いて鈴木氏らは、Tregを用いた検証を行った。まず、乳癌手術症例100例を対象に、乳癌の進展別にSNにおけるTreg動態を解析した。患者100例の内訳はDCIS(非浸潤性乳癌)20例、IDC(浸潤性乳癌)のうち微小浸潤(predominant DCIS)20例、IDC(pN0)20例、IDC(pN1mi、0.2〜2mmの微小転移)20例、IDC(pN1)20例。

 方法は、Tregのマスター遺伝子であるFoxp3の免疫染色による評価とし、SNにおけるTreg集積の変化を見た。その結果、predominant DCISに比べて、pN0のIDC、微小転移陽性(pN1miのIDC)においてTregの増加を認め、乳癌の進展によってSNにおけるTregの集積数に変化があると考えられた。

 次に、SN転移陽性例において、NSN(−)群30例、NSN(+)群30例を対象に、主病巣、SN、NSNにおけるTregの集積を比較検討した。

 患者背景では、SNの転移腫瘍径が、NSN(−)群で平均3.881mm(2.1-8.1)、NSN(+)群で3.04mm(2.2-7.2)と同等だった。なお年齢、病理学的腫瘍径、組織学的異型度、ER、PgR、HER2の状態について2群間で差はなかった。

 上記の患者群において、Treg集積を比較した。SN陽性例において、NSN(−)群はNSN(+)群に比べてSNにおけるTreg集積は有意に多かった。これはNSN(+)でなければTregは主にSNにあることが推測される。また、NSN(+)群はNSN(−)群に比べ、NSNにおけるTreg集積が有意に増加していた。一方、主病巣のTreg集積の比較では、NSN(−)群とNSN(+)群の間に有意差は認めなかった。

 以上の結果から、NSN転移の有無により、SN、NSNにはTregの特異的な偏在が認められ、SNにおけるTregの集積数を用いたSN単独転移診断の可能性が示唆された。

 Treg動態を裏付けるため、同じ症例を用いてTregの動態を制御しているケモカインCCL22の免疫染色を施行した。免疫強度によって0、1+、2+、3+の4つに分類した。

 結果、主病巣におけるCCL22の染色強度にNSN(+)群とNSN(−)群の間で有意差は認めなかった。また、SNのCCL22の染色強度はNSN(+)群がNSN(−)群に比べて有意に高かった。さらに、NSN(+)群においてSNのCCL22染色強度は高かったが、NSNにおける染色強度はさらに高かった。つまり、ケモカインであるCCL22がTregを進展先へと誘導していると考えられ、NSN(−)群ではまだNSNまで腫瘍が到達していないことからSNにおけるCCL22の染色強度は低〜中等度だったが、NSN(+)群ではNSNまで腫瘍が到達していることからSNのCCL22染色強度は中等度以上で、NSNのCCL22染色強度はさらに高く、NSNの診断に用いることができる可能性が示唆された。

 鈴木氏らはさらに、Treg低値群と高値群にわけ、無再発生存期間(RFS)に対するTreg集積数の有意差を調べた(Treg集積数のカットオフ値中央値を60とした、観察期間45カ月)。転移陽性SNにおけるTreg集積低値群は、高値群に比べ、RFSが有意に短かった(p=0.028)。

 これらの結果から、「SNにおけるTreg集積数はSN単独転移の診断ができる可能性がある。また、SN、NSNにおけるTregの集積数とCCL22の染色強度を比較することで、NSN転移の診断もできる可能性が示唆された。NSN郭清省略と腋窩ステージングを両立させる極めて有用な方法論として期待される」と、鈴木氏は締めくくった。