乳癌で術前または術後に補助化学療法を受けた患者のアンケート調査から、毛髪減少については、FEC(フルオロウラシル、エピルビシン、シクロホスファミド)→DTX(ドセタキセル)を施行した患者は、治療終了後2年以上を経過しても約74%が悩んでおり、約30%がウィッグや帽子などを使用していることが示された。6月27日から29日まで浜松市で開催された第21回日本乳癌学会学術総会で、日立製作所日立総合病院外科の伊藤吾子氏が発表した。

 伊藤氏らは、毛髪減少や末梢神経障害残存など、生命の危険はないがQOLを損ねる副作用について、治療終了2年以降、どの程度残存するのかを調査、検討した。

 2005年1月から2010年12月までに同院で手術を施行し、術前または術後に補助化学療法を行った患者218人中、再発による追加化学療法歴のない患者190人にアンケート調査を行った。回答が得られた170人(89.5%)を解析の対象とした。治療開始時の平均年齢は53.5歳、治療終了から回答までの平均期間は3.95年だった。

 レジメンごとの症例数とアンケート回答率、平均年齢は、FEC群59人(85.5%、52.5歳)、DTX(ドセタキセル)群6人(87.5%、61.5歳)、PTX(パクリタキセル)群19人(90.5%、62.7歳)、FEC→DTX群86人(92.4%、51.6歳)となった。

 医師、看護師による対面または電話アンケートにおいて、毛髪減少については、患者の主観的な「毛髪量に対する満足度」、「毛髪の質に対する満足度」、「日常生活におけるウィッグ、帽子の使用の有無」、「毛髪に対し不満な点」を調査し、化学療法のレジメンごとに検討した。

 毛髪量の満足度について不満と回答したのは、FEC群11.9%、DTX群33.3%、PTX群36.8%、FEC→DTX群74.4%だった。FEC→DTX群とFEC群、PTX群、DTX群の間に有意差が認められた(いずれもp<0.01)。毛髪の質の満足度について不満と回答したのは、それぞれ27.1%、50%、26.3%、69.8%だった。FEC→DTX群とFEC群、PTX群の間に有意差が認められた(いずれもp<0.001)。

 ウィッグ、帽子を使用していると回答したのは、FEC群10.2%、DTX群16.7%、PTX群21.1%、FEC→DTX群30.2%だった。FEC→DTX群とFEC群の間に有意差が認められた(p<0.01)。

 FEC→DTX群の毛髪量に対する満足度、ウィッグ・帽子使用の有無をさらに検討すると、治療終了後の期間(3年未満と3年以上)、治療開始時年齢(50歳未満と50歳以上)、ホルモン療法の有無では、いずれも有意差はなかった。ただし、3年以上経過した群では、ウィッグの使用は減少していても、毛髪量に対する満足度は低かった。

 全レジメンとFEC→DTX群の両方において、80%以上の患者が頭頂部から前頭部が薄い女性男性型脱毛症を、約50%が毛髪が細くなったと訴え、毛髪が細くなったことによるボリュームの低下も不満の一因であることがわかった。

 伊藤氏は長期脱毛への対応として、「サブタイプや再発リスクに応じた必要なだけの化学療法レジメンの選択が求められる」とした。さらに、クールキャップ、治療終了早期からの塩化カルプロニウム、ミノキシジルの使用も検討し、患者にはあらじかじめ、頭頂部の毛髪希薄が遷延する可能性と部分ウィッグの使用などの対応法を伝えておく必要を示した。

 伊藤氏は「治療効果と長期的な副作用を考えた、補助化学療法のレジメンの適切な選択が必要」と結んだ。