早期乳癌に対し、高エネルギー電子線を用いた単回術中電子線治療(single-fraction IOERT)は、日本人においても安全に実施可能な治療法と考えられることがフェーズ1試験から示された。6月27日から29日まで浜松市で開催されている第21回日本乳癌学会学術総会で、群馬県立がんセンター放射線治療科(現・筑波大学、茨城県地域臨床教育センター)の玉木義雄氏が発表した。

 乳房温存手術後の放射線療法として、照射期間を短縮し患者の負担を軽減するという観点から、1回当たりの放射線量を増やす加速乳房部分照射(APBI:accelerated partial-breast irradiation)があり、中でも術中照射(IORT:intraoperative electron beam radiation therapy)のみで治療を終えるsingle-fraction IORTが注目されている。

 術中照射については、1989年より欧州を中心に臨床試験が展開されている。single-fraction IOERTを検討したイタリアのELIOT試験では、フェーズ1試験で至適線量が21Gyと決定された。さらに全乳房照射(WBRT)と比較したフェーズ3試験も終了したが、結果はまだ発表されていない。また、英国を中心に行われたフェーズ3のTARGIT-A試験では、乳房内再発について、術中照射による部分乳房照射のWBRTに対する非劣性が初めて証明された。

 日本では術中照射専用装置の導入を契機として、2007年に名古屋大学でフェーズ1試験が開始され、フェーズ2試験と併せて、ELIOT試験と同じ線量である1回21Gyのsingle-fraction IOERTの安全性が確認された。

 群馬県立がんセンターにおいても、single-fraction IOERTのフェーズ1試験として、治療後3カ月以内のグレード3以上の非血液毒性を用量制限毒性(DLT)とする線量増加試験が行われた。

 対象は、腫瘍径3cm以下の乳管癌、広範な管内進展がない、胸壁・乳房への照射歴がないなどの条件を満たす患者で、術後病理診断で追加切除が必要と判断されたものは中止として扱うこととした。線量レベルとして、レベル1を18Gy、レベル2を21Gyとした。

 術式は乳房円状部分切除術(Bp)または乳房楔状部分切除術(Bq)とし、センチネルリンパ節生検を施行した。腫瘍辺縁から1cm以上のマージンをつけて切除した。

 乳癌術中照射では、腫瘍の切除後に乳腺組織の背側に遮蔽板を挿入し、円形照射筒を設置し、手術台を手術室内の照射専用装置(商品名:Mobetron)に移動して、ガントリと照射筒を整合させ、モニターで部位を確認し、治療開始となる。

 2008年11月から2009年3月までにレベル1(18Gy)で治療が行われた3人では、DLTは発生しなかった。有害事象としては、グレード1と2の乳房線維化が各1人に、グレード1の感染が1人に発現した。

 2009年8月から2009年11月までにレベル2(21Gy)で治療が行われた3人でも、DLTは発生しなかった。有害事象としては、グレード1の乳房線維化が1人、グレード1の乳房痛が1人に発現したのみだった。

 対象6人の背景因子をみると、年齢中央値は67歳、非浸潤性乳管癌(DCIS)が1人含まれた。術後の最短切除マージン(乳管内浸潤を含む)は、DCISを除く5人では5mmを超えていた。

 経過観察期間中央値46.5カ月において、5人では乳房再発を認めなかった。DCISの1人は36カ月目に乳房再発を認めた。

 フェーズ1試験で安全性が確認されたことから、玉木氏らは、名古屋大学、愛知県立がんセンターと共同で、2010年6月からフェーズ2試験を開始している。

 同試験では、乳房部分照射(Bq)+術中電子線照射21Gyで、切除断端から2cm以上含む範囲を照射することとしている。主要評価項目は有効性(患側乳房局所再発率)である。目標症例数は140人。選択基準には、腫瘍径2.5cmまでの乳癌、年齢50歳以上、術中迅速病理検査にて乳腺断端に腫瘍を認めない、術前あるいは術中センチネルリンパ節生検にてリンパ節転移を認めない、などが含まれる。