乳癌の原発巣はLuminalタイプだった症例が初回再発時にはトリプルネガティブに、あるいは原発巣がトリプルネガティブだった症例が初回再発時にはLuminalタイプやHER2タイプに変化しているケースなど、原発巣と転移巣のバイオマーカーやサブタイプの変化を検討した結果を、聖路加国際病院病理診断科の阿部江利子氏らが報告した。

 バイオマーカーやサブタイプが変化した症例数は既報と比較して少ない傾向にあり、またバイオマーカーが変化した症例と変化しなかった症例の間で予後に差が見られなかったが、今後より多くの症例を蓄積して検討が必要と阿部氏は語った。6月28日から熊本で開催された第20回日本乳癌学会学術総会で検討の結果を発表した。

 乳癌に対する治療方針を決定する際には、免疫組織化学的染色におけるバイオマーカーの情報を参考とする。しかし、乳癌の再発巣のバイオマーカーは、原発巣と異なることが少なくない。そこで阿部氏らは、手術巣と再発巣とで、組織像やバイオマーカー(ER、PgR、HER2)の比較、予後を検討した。

 対象は、同院にて原発乳癌の手術歴があり、2009年から2010年に乳癌の初回再発と診断された40例(年齢中央値は53.5歳)とした。薬物療法によるバイオマーカーの変化の影響を回避するため、初回再発例のみを対象とした。また、バイオマーカー評価の施設間差による影響を回避するため、同院で評価した症例のみを対象とした。

 原発巣については、核グレード1が32.5%、核グレード2が37.5%、核グレード3が30.0%。腫瘍径は、2.0cm以下が40%、リンパ節転移については転移陰性例が47.5%、1〜3個が40%、4個以上が12.5%だった。バイオマーカーは、ER陽性が62.5%、PgR陽性が47.5%、HER2陽性が57.5%だった。

 再発までの治療内容は、術後ホルモン療法を受けた例が52.5%、術前・術後化学療法を受けたのが60%。トラスツズマブ治療を受けたのは10%で、放射線治療は67.5%が受けていた。

 再発例の多くは局所再発で、乳房45%、皮膚20%、リンパ節15%だった。遠隔転移については肝臓10%、気管支2.5%、肺2.5%、骨もしくは骨髄5.0%だった。

 バイオマーカーの変化を検討した結果、ER陽性から陰性になった例が2例、反対にER陰性から陽性になった例が5例で、合わせて17.5%でERが変化していた。PgRは、陽性から陰性が3例、陰性から陽性が4例で、合わせて17.5%が変化した。HER2は、陽性から陰性になった例はなく、2例が陰性から陽性になり、5.0%の変化率だった。

 サブタイプについて検討した結果、Luminal A/Bだった症例が再発時にトリプルネガティブになったのが2例(7.7%)、HER2だった症例がLuminal A/Bとなったのが4例(44.4%)、トリプルネガティブだった症例がLuminal A/Bになったのが1例(20%)、HER2となったのが1例(20%)だった。

 バイオマーカーの変化があったグループと変化がなかったグループに分けて無象悪生存期間や全生存期間を評価した結果、有意な差は認められなかった。有意差が見られなかったのは、症例数が少なかったためと考えられた。