アロマターゼ阻害剤(AI)耐性乳癌においてはNF-κB活性が亢進しており、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤によってNF-κBが抑制されることから、同薬の標的の1つはNF-κB経路である可能性が示された。6月28日から熊本で開催された第20回日本乳癌学会総会で、九州大学臨床・腫瘍外科の久保真氏が発表した。

 久保氏らは、AI耐性乳癌に対する治療法の開発は直近の課題であるとし、今回、AI耐性乳癌に対して開発中のHDAC阻害剤LBH589(panobinostat)のメカニズムについて、細胞株やモデルマウスなどを用いて検討を行った。

 研究では、乳癌細胞株(MFC)から3種のAI剤(エキセメスタン、レトロゾール、アナストロゾール)耐性の閉経後乳癌モデル細胞株を作り、無治療細胞株と比較した。

 その結果、AI耐性乳癌に関与する22遺伝子のなかから、NF-kB1(p50)発現がAI耐性乳癌細胞で高まっていることを見いだした。また、NF-κB活性もAI耐性乳癌細胞で高まっていた。

 また、NF-κB1発現を抑制するとAI耐性乳癌株の増殖が抑制されることが確認された。逆に、NF-κB1を強制発現させた細胞株では用量非依存的にAI耐性となることも示された。同様にin vivoおよび腫瘍サンプルにおいても、NF-κB1の亢進が確認された。

 一方、第2世代のHDAC阻害剤であるpanobinostatにおいては、panobinostatを投与することで発現が減少する遺伝子の1つとしてNF-κB1があることが示されている。久保氏らはこれに着目し、AI耐性株に対する機序を調べた。

 AI耐性細胞株を対象にpanobinostatを投与したところ、NF-κB1発現の7〜9割を時間依存的に抑制し、アポトーシスへ導くことが示された。また、AI耐性株を移植したモデルマウスにおいて、エキセメスタン+panobinostat併用投与は、腫瘍増殖やNF-κB1発現の抑制が確認された。

 さらに臨床サンプルを対象にNF-κB1の発現を解析した結果、AI耐性乳癌において発現が上昇していることが明らかとなった。

 これらの結果から、「AI耐性乳癌ではNF-κB経路が活性化していることが示された。NF-κB経路は、HDAC阻害剤panobinostatの標的の1つであることが示唆された」と久保氏は結論づけた。