術前化学療法後に乳房温存療法を実施した患者における乳房内再発のリスク因子は、残存腫瘍触診径2.0cm以上、ER陰性、タキサン単独のレジメンであることが示された。この3つの因子をもつ患者の乳房内再発率は30%だった。昭和大学乳腺外科の明石定子氏が、6月28日から熊本市で開催された第20回日本乳癌学会総会で発表した。

 術前化学療法で良好に縮小した浸潤性乳癌に対する乳房温存療法は、日本乳癌学会の診療ガイドラインでグレードBで推奨されている。また、術前化学療法後の乳房温存療法を選択した患者における乳房内再発は、最初から温存可能だった患者と比べ、乳房内再発が多いという報告がある。

 そこで明石氏らは、術前化学療法後に乳房温存療法を実施した患者における乳房内再発のリスク因子を検討するため、後ろ向き解析を行った。

 対象は、7施設において1995年から2006年に3サイクル以上の術前化学療法後に乳房温存療法を実施し、乳房照射を受けた触診径2cm以上の浸潤癌患者381人。炎症性乳癌や化学療法以外の術前療法を受けている患者は除外した。

 患者背景は、診断時の平均年齢が47.8歳、術前化学療法前の触診径はT2が8割を占め、ステージN0、N1がそれぞれ約5割ずつだった。HER2陰性が52.0%、HER2陽性が13.9%、ER陰性が47.8%、ER陽性が37.8%、PgR陰性が47.5%、PgR陽性患者が30.4%。術前化学療法レジメンは、アントラサイクリン+タキサンが68.0%、アントラサイクリン単独が23.9%、タキサン単独が8.1%だった。

 術前化学療法による臨床効果は、完全奏効(CR)が29.4%、部分奏効(PR)が49.6%、不変(SD)が15.7%、進行(PD)が1.3%。病理学的完全奏効(pCR)は14.7%だった。術後に化学療法を追加した患者は38.3%、内分泌療法を追加したのは55.4%だった。

 観察期間中央値は50カ月で、乳房内再発率は4.7%だった。領域リンパ節再発率は6.0%、遠隔再発率は14.7%だった。ただし、ER陽性かつHER2陰性の128人では乳房内再発例はいなかった。

 多変量解析により乳房内再発の予測因子を検討したところ、リンパ節転移個数が4個以上(ハザード比3.59、p=0.02)、ER陰性(同0.10、p<0.01)、遺残腫瘍の大きさが1.8cm以上(同5.29、p=0.03)が有意な因子として抽出された。

 術前化学療法終了時点で、入手可能な因子をもとに乳房内再発因子について多変量解析を行った結果、術前化学療法後の残存腫瘍触診径2.0cm以上(ハザード比4.020、p=0.035)、ER陰性(同4.535、p=0.052)、タキサン単独のレジメン(同3.937、p=0.038)が有意な乳房内再発因子として抽出された。この3つの因子をもつ患者の乳房内再発率は30%だった。

 さらに、全生存期間(OS)の予測因子を多変量解析したところ、pN1-3、組織学的グレード、ER陰性、乳房内再発ありがOSを短くする有意な因子だった。術前化学療法後に乳房温存療法を実施した患者における乳房内再発は、OSの予後因子であることが示された。

 これらの結果から明石氏は、「乳房内再発は、術前化学療法後の残存腫瘍触診径、ER陰性、レジメンを組み合わせてみることで、術前に予測可能だった」とまとめた。