乳癌脳転移全脳照射した後に再増悪が認められた例に対する放射線再照射は、緩和治療として安全かつ有効である可能性が示された。国立がん研究センター中央病院乳腺科・腫瘍内科の内海裕文氏らが、6月28日から熊本で開催された第20回日本乳癌学会学術総会で発表した。

 乳癌の多発脳転移に対しては、全脳照射が施行されるが、半数以上の患者で全脳照射後に脳転移の再増悪が認められるとの報告がある。全脳照射後の脳転移増悪に対する放射線再全照射についてのエビデンスは十分に確立していない。そこで内海氏らは、全脳照射後の乳癌脳転移増悪に対する放射線再照射の有用性について検討した。

 対象は、2000年1月から2010年12月までに同院で脳転移に対して全脳照射を施行した後に脳転移増悪を認め、再度放射線照射(定位照射は含まない)を施行した19例(年齢中央値は48歳)、21再照射とした。21再照射中19例でステロイドを併用していた。

 患者背景は、PS 0から1が5%、PS 2が43%、PS 3が38%、PS 4が14%だった。組織型は浸潤性乳管癌が89%、浸潤性小葉癌が5%、不明5%だった。ホルモン受容体陽性が32%、HER2陽性が47%、トリプルネガティブが16%だった。脳以外に遠隔転移を認めた症例は90%。脳転移の個数は、1個が14%、2個が19%、3個が10%、4個が10%、5個以上が43%、不明5%だった。前回照射からの期間中央値は6カ月だった。

 再照射の内容としては、全脳照射38%、局所照射62%だった。照射線量は、初回の全脳照射時は全例で30Gyだった。再照射では、全脳照射例で20Gyから25Gy(中央値20Gy)、局所照射例で20Gyから30Gy(中央値25Gy)。

 神経症状改善効果については、RTOG神経機能分類を用いて評価した。「仕事をすることができ、普通に生活できる。神経症状はないかあってもわずかである」というRTOG神経機能Class1まで改善した例(消失例)が33%、RTOG神経機能が改善した例が33%、RTOG神経機能が不変だった例が29%、RTOG神経機能が増悪した例が5%と、ステロイドを併用しつつも多くの例で改善が認められた。

 毒性については、認知症や放射線壊死は認められなかった。耳管狭窄症と考えられる耳鳴を1例認めた。そのほかは、悪心、嘔吐、頭痛、頭重感、皮膚炎、倦怠感、喉頭違和感がわずかに認められたが、いずれもCTCAEグレード1と軽度だった。CTCAEグレード3の多幸症が1例認められたが、放射線の影響ではないと考えられた。

 放射線再照射後の生存期間の中央値は6カ月(1-9カ月)だった。予後因子としては、単変量解析の結果、年齢65歳未満の方が良好だった(p=0.016)。PSは、PS 0-3とPS 4で比較するとPS 0-3の方が有意に良好だった(p=0.016)。ホルモン受容体、HER2、トリプルネガティブ、脳以外の遠隔転移、脳転移の個数、前回照射からの期間、照射方法、照射線量などはいずれも有意差がなかった。

 これらの結果から内海氏は、全脳照射後の乳癌脳転移に対する放射線再照射は、緩和治療として安全かつ有効である可能性があるとし、「単変量解析の結果から、65歳未満、PS 4以外は、放射線再照射の予後良好因子である可能性が示唆された」と結論した。