癌性腹膜炎や多発肺転移、癌性胸膜炎などが見られるLife threateningなステージIV Luminal乳癌において、初回化学療法で病勢制御可能となれば、平均22.1カ月の維持内分泌療法が可能であることが示された。一方、初回化学療法導入時と内分泌療法終了時におけるLife threateningな病態は変化しており、長期治療において病態変化が起きていることが明らかとなった。6月28日から熊本市で開催されている第20回日本乳癌学会総会で、岐阜大学腫瘍外科の名和正人氏が発表した。

 ステージIVのLuminal乳癌において、一般的には内分泌療法を行うが、Life threateningな病変がある場合は化学療法を行っていく治療戦略が示されている。

 ただし、Life threateningな病変に対して一次化学療法を行った後、Life threateningな状態から脱することができた場合、化学療法を継続するか、内分泌療法を行うかについては診療ガイドラインでは示されていない。

 そこで名和氏は、初診時にLife threateningな転移のため、化学療法を先行させた後に内分泌療法を行い、内分泌療法耐性となったために化学療法を再導入したLuminal乳癌9例を対象に、奏効期間や奏効率、治療の変更理由などについて詳細に検討した。

 対象の9例は年齢56.9歳、閉経後が8例(89%)、全例がER、PgRいずれも陽性で、全例がHER2陰性だった。

 Life threateningと判断された理由は、癌性腹膜炎が12%、多発肺転移が25%、癌性胸膜炎が37%、多発肝転移が13%、骨髄癌症が13%。転移臓器数は1カ所が45%、2カ所が33%、3カ所が11%、4カ所以上が11%だった。

 初回化学療法のレジメンは、weeklyパクリタキセルが34%、エピルビシン+シクロホスファミドが22%、フルオロウラシル+エピルビシン+シクロホスファミドが33%、エピルビシン+シクロホスファミド→ドセタキセルが11%だった。

 初回化学療法後の維持内分泌療法の開始時レジメンは、レトロゾールが45%、アナストロゾールが44%、タモキシフェンが11%だった。維持内分泌療法の使用薬剤数は、1剤が11%、3剤が11%、4剤が78%だった。

 初回化学療法後、再化学療法開始までの維持内分泌療法の施行期間は、平均22.1カ月、中央値24カ月だった。

 維持内分泌療法の施行期間の平均値を閾値として長期施行群と短期施行群に分けて背景を比較したが、転移臓器数、初診時肝転移や肺転移、骨転移の有無などに差は見られなかった。

 維持内分泌療法で増悪し、化学療法を再導入した因子を検討した結果、多発肝転移が37%、多発骨転移が25%、腫瘍マーカーの上昇が25%、癌性胸膜炎の増悪が13%だった。

 化学療法再導入時のLife threateningな病態について検討した結果、初回化学療法と同様な理由だったのは11%で、89%は初回化学療法開始時とは異なる理由だった。

 再化学療法の施行期間は平均26.3カ月、中央値は20カ月だった。

 再化学療法の施行期間の平均値を閾値として長期群と短期群に分けて背景を比較した結果、内分泌療法施行期間について、長期群では19.5カ月、短期群では24.6カ月で、有意ではなかったものの、再化学療法施行期間が短いグループほど、その前に実施した内分泌療法の施行期間が長い傾向が示された。

 これらの結果から名和氏は、初回化学療法後の維持内分泌療法の奏効期間を予測する因子は見いだされなかったこと、初回化学療法で病勢制御可能となれば平均22.1カ月の維持内分泌療法が可能であること、初回化学療法導入時と内分泌療法終了時のLife threateningな病態は変化することから長期治療での乳癌の病態変化が起きていること、維持内分泌療法とその後の化学療法の奏効期間は逆相関の傾向にあったことが示されたとまとめた。

 そして、今後、Life threateningの定義を明確化し、維持内分泌療法の奏効を予測する因子や乳癌のバイオロジーの変化についての解明を進める必要があると指摘した。