乳癌に対する術前化学療法前の造影MRIで、腫瘍の形状が単発腫瘤型または腫瘍辺縁部での薄く均一な造影効果は、術前化学療法による病理学的完全奏効(pCR)の予測因子として有効である可能性が示された。長崎医療センター放射線科の中島一彰氏が、6月28日から熊本市で開幕されている第20回日本乳癌学会学術総会で発表した。

 術前化学療法の効果判定のためにMRIが撮影されることが多いが、術前化学療法前のMRI所見から治療効果を予測できるかは明らかではない。また、術前化学療法後の造影MRIで造影効果が確認された場合、それが腫瘍の残存を示しているのかどうかについて判断が難しいことがある。

 そこで中島氏らは、化学療法の治療効果を予測する上で重要なintrinsic subtypeごとに、術前化学療法前後のMRI像所見の特徴と、組織学的治療効果について検討した。

 対象は、術前化学療法前後にMRI撮影と針生検を実施した、最大腫瘍径2.0cm超(造影MRIによる判定)の乳癌患者70人。術前化学療法(5-FU、エピルビシン、シクロホスファミド併用療法後に、ドセタキセル療法)施行後に手術を行い、ER、HER2蛋白の発現の有無により4群(Luminal A、Luminal B、HER2-enrich、トリプルネガティブ)に分類。組織型、化学療法前後の造影MRI所見、腫瘍縮小率・縮小形態、病理学的効果の関係について評価した。画像評価は、放射線科医2人で行った。

 その結果、Luminal A(ER陽性、HER2陰性)は24人、Luminal B(ER陽性かつHER2陽性、ER陽性かつHER2陰性かつ核グレード3)は14人、HER2-enrich(ER陰性、HER2陽性)は16人、トリプルネガティブ(ER陰性、HER2陰性)は16人だった。平均年齢は51歳、腫瘍最大径平均値は46mm、浸潤性乳管癌は61人で、うち硬癌が最も多く40人、乳頭腺管癌9人、充実腺管癌7人。浸潤性小葉癌が3人だった。

 術前化学療法前の腫瘍の形状・分布別のpCR率は、単発腫瘤が38%、単発+娘結節または多発腫瘍が18%、非腫瘤性が23%で、単発腫瘤でpCR率が高い傾向が見られた。なお、トリプルネガティブ例において単発腫瘤が多く見られた。

 さらに、腫瘍辺縁部のリング上の造影効果(rim enhancement)の状態別にpCR率をみると、薄く均一に造影された患者におけるpCR率が70%と最も高く、腫瘍が厚く不整に造影されたのは25%、腫瘍辺縁部がリング上に造影されなかったのは18%だった。腫瘍辺縁部が薄く均一に造影された像はER陰性例、とくにトリプルネガティブ例で多く確認された。

 ER発現状態別に術前化学療法治療後の腫瘍縮小率を検討した結果、ER陰性例(HER2過剰発現患者、トリプルネガティブ患者)が平均68%、ER陽性例(Luminal A、Luminal B)が平均32%だった。ER陰性例のpCR率は、ER陽性例と比べ、有意に高かった(p<0.01)。HER2過剰発現例とトリプルネガティブ例の間では、pCR率に有意差はなかった。

 また、術前化学療法後に実施した造影MRIで部分奏効(PR)と判定された症例におけるpCRの割合は、ER陽性例では32人中1人だったのに対し、ER陰性例では24人中11人で、ER陰性例におけるpCR率は有意に高かった(p<0.01)。ER陰性例は、術前化学療法後の造影MRIで造影効果が残存していても、つまり腫瘍があるように見えても、組織学的には腫瘍が消失している可能性が高いことが示された。

 これらの結果から、中島氏は、術前化学療法前に撮影した造影MRI像において単発腫瘤型や薄く均一な腫瘍周縁部での造影効果が得られた場合はpCR率が高く、pCRの予測因子と考えられるとした。また、ER陰性例においては、術前化学療法後の造影MRIでPRと判断された場合でもpCRが得られている可能性が高いことも示されたと語った。