術前化学療法(NAC)後に乳房温存術を施行した例において、リンパ節転移陽性、脈管侵襲陽性が局所再発における独立したリスク因子となることが示された。国立がん研究センター東病院乳腺科の山崎信義氏らが、6月28日から熊本で開催されている第20回日本乳癌学会学術総会で発表した。

 従来は乳房全切除の適応となっていたような症例でも、NAC施行によって乳房温存術が可能となる症例が増加している。山崎氏らは今回、NAC後に乳房温存術を施行した症例における術後局所再発因子について検討した。

 対象は、2002年2月から2011年3月にNACを施行した後、乳房温存術を施行した217例(年齢52.0歳)。温存乳房内、同側皮膚、所属リンパ節といった局所再発について検討した。NACはアントラサイクリン系抗癌剤を中心としてタキサン系抗癌剤の併用、また症例によってトラスツズマブを併用するレジメンで行った。腫瘍本体の浸潤成分消失を病理学的完全奏効(pCR)と定義し、検討した。

 NAC前平均腫瘍径は3.8cm、217例中、cN0が63例、N1が108例、N2が29例、N3が17例。NACレジメンはアントラサイクリン系抗癌剤+タキサン系抗癌剤併用例が178例と最も多く、NACの効果はcCRが94例、PRが96例、SDが25例、PDが2例だった。術後薬物療法を行ったのは160例で、うち内分泌療法単独が99例、化学療法+内分泌療法が35例、化学療法単独が26例だった。術後放射線療法を行ったのは207例だった。

 217例中、pCRが得られたのは56例。pN0が129例、N1が56例、N2が22例、N3が10例。ER陽性例が123例、PgR陽性例は111例、HER2陽性例は47例。Ki67が10%超だったのは44例だった。

 追跡の結果、再発が認められたのは33例。このうち22例は遠隔転移のみだった。局所再発例は11例(温存乳房6例、同側皮膚3例、所属リンパ節7例)で、うち6例では遠隔転移も認めた。観察期間の中央値は30カ月で、5年局所再発率は6.2%だった。

 サブタイプ別に見ると、luminal A(90例)の局所再発率は3.3%、luminal B/HER2陰性(16例)では6.3%、luminal B/HER2陽性(33例)では0%、HER2(27例)では7.4%、トリプルネガティブ(51例)では9.8%だった。

 局所再発のリスク因子を単変量解析したところ、リンパ節転移陽性、脈管侵襲陽性、術後Ki67高値遺残(>10%)、エストロゲン受容体(ER)陰性、プロゲステロン受容体(PgR)陰性、術後ホルモン療法非施行例において、有意に局所再発率が高かった。

 また多変量解析の結果、リンパ節転移陽性(オッズ比5.502、p=0.0377)、脈管侵襲陽性(9.698、p=0.0052)が独立した局所再発のリスク因子だった。

 これらの結果から山崎氏は、「5年局所再発率は6.2%であり、乳房温存術は術前化学療法後も施行可能と考えられる」と結論した。