HER2陰性、ホルモン受容体陰性のいわゆるトリプルネガティブ乳癌(TNBC)患者に限らず、DNAの相同組み換え修復(HDR)不全が化学療法感受性のバイオマーカーとなる──。9月2日から開催された第19回日本乳癌学会学術総会で、聖マリアンナ医科大学大学院の太田智彦氏が講演した。

 BRCA1遺伝子の機能不全と関連するBasal-like乳癌は、TNBC患者のうちの39%から59%を占める。BRCA1/2遺伝子変異などが起きている癌細胞では、DNA損傷時にPARP(poly[ADP]-ribose polymerase)阻害剤でPARPを阻害すると、DNA複製に伴って2本鎖が切断されてもHDR不全となり、細胞が合成致死へ誘導される。そこで、散発性のTNBCでもPARP阻害剤やプラチナ製剤の有効性が期待されている。

 しかし、最近発表された転移性TNBCに対するPARP阻害剤BSI-201(iniparib)の第3相試験では、iniparibを併用投与しても全生存期間と無増悪生存期間の有意な改善を認めることができなかった。この原因として、試験デザインの問題や、プラチナ製剤併用群では上乗せ効果が出にくいことなどが挙げらているが、そのほかに、TNBC患者のうち、Basal-like乳癌は2割から3割にすぎないが、今回の試験ではBasal-like乳癌以外のTNBC患者が含まれていたため、有意差が出なかった可能性があるとの指摘もある。特に、最近、Perouらによって提唱されているClaudin-low型は、Basal-like乳癌と比べ、化学療法に対する感受性が低いため、臨床試験の結果に影響を与えた可能性がある。

 そこで、TNBCを化学療法感受性群と非感受性群に区別する必要があると太田氏は訴えた。PARP阻害剤やプラチナ製剤の作用機序には、DNAのHDR不全による合成致死が重要となるため、この機能不全を検出することがポイントになる。HDR不全のバイオマーカーとしては、BRCA遺伝子の機能不全を始め、BRCA2遺伝子の生殖細胞系列変異やDNA破損など、HDR因子の機能不全を挙げた。これらから太田氏は、HDR不全はTNBC患者に限らずPARP阻害剤などの化学療法感受性のバイオマーカーとなる可能性があると指摘した。