乳癌治療におけるセンチネルリンパ節生検(SNB)はリンパ節転移の有無を判断するのに有用だが、術前化学療法後のSNBの有用性については議論がある。しかし術前化学療法前にリンパ節転移がなかった患者(N0)や化学療法が著効してN0になった患者では、SNBによる腋窩リンパ節郭清の省略も考慮できることがレトロスペクティブな解析で示唆された。国立がん研究センター中央病院乳腺腫瘍外科の木下貴之氏らが、9月2日から仙台市で開催された第19回日本乳癌学会学術総会で発表した。

 臨床的リンパ節転移陰性乳癌において、SNBで転移陰性であれば、腋窩リンパ節郭清の省略が推奨されている。2010年にはSNBは保険適応となり、標準治療になってきているが、術前化学療法後のSNBの有用性、非浸潤性乳管癌(DCIS)症例に対するSNBの適応、微小転移や遊離腫瘍細胞のある患者への腋窩リンパ節郭清の意義については解決していない。そこで、木下氏らは今後のコンセンサス作りを目指し、上記3点について検討した。

 術前化学療法によって進行乳癌でも約半数の患者で乳房温存療法が可能になってきた。さらに木下氏によれば、術前化学療法の著効例では進行乳癌でも早期乳癌と同程度まで腋窩リンパ節転移が陰性化しているという。そこで、術前化学療法が著効し、臨床的に腋窩リンパ節転移が陰性化した患者において、SNBの成績が検討された。

 対象は乳癌患者200人、平均年齢は50.1歳(23-78歳)、腫瘍径の平均値は4.8cm(2.0-12.0cm)だった。T2の患者が117人、T3が69人、T4が14人で、N0が87人、N1が92人、N2が21人。術前化学療法によって完全奏効(CR)の患者は53%、部分奏効(PR)が39.5%、病理学的CR(pCR)は21.5%だった。

 一般に化学療法を行うと、センチネルリンパ節の同定が難しくなるといわれるが、センチネルリンパ節は併用法で189人(95%)が同定でき、うち転移陽性は74人(39%)、偽陰性率は12.9%、正診率は94%だった。このため「併用法による術前化学療法後の同定率は、術前化学療法を行っていない患者での同定率と同等だった。ただ偽陰性は高い傾向があった」とした。
 
 また有意ではなかったが、T4の患者では同定率が低い傾向があったことから、T4/N2の患者はSNBの適応外とした。しかし「腫瘍とリンパ節への化学療法の効果はパラレルなので、化学療法前にN0の患者だけでなく、術前化学療法が著効してN0(完全奏効)となった患者も、SNBの適応になるだろう」と述べた。

 次に術前診断がDCISの患者に対するSNBが検討された。一般にDCISではリンパ節転移はないため、最終病理診断でDCISであればSNBは不要とされているが、術前診断がDCISの患者ではSNBの必要性ははっきりしていない。

 対象は、術前診断でDCISと診断された106人。このうち最終病理診断で浸潤癌だったのは45人(42%)だった。センチネルリンパ節転移陽性は全体では8.2%だが、最終病理診断でDCISだった患者では1.8%、浸潤癌の患者では16.3%であった。

 またDCISと浸潤癌の患者背景を比較した結果から、触知可能な、あるいは画像診断による腫瘤の存在が疑われる場合やハイグレードなDCISでは、浸潤癌のリスクが高いことから、全乳房切除術と同時にSNBを行うべきであるとした。

 続いて、SNBを行った1090人のうち、微小転移のある患者(pN1mi(sn):MIC群)71人と、遊離腫瘍細胞のあった患者(pN0(i+)(sn):ITC群)34人を対象に、腋窩リンパ節郭清の必要性が検討された。計105人のうち腋窩リンパ節郭清が83人に行われており、HE染色では18%、IHC法の追加で31%に非センチネルリンパ節への転移が認められた。なお、マクロ転移はHE染色でMIC群が13%、ITC群で15%、IHC法の追加でMIC群は14%、ITC群で15%だった。

 無病生存率を比較すると、MIC群とITC群の無病生存率は、リンパ節転移陰性例(pN0(sn))と同等だった。術後全身化学療法が87人(83%)に施行されており、その効果によるものとも示唆された。マクロ転移が認められることから、MIC群やITC群における腋窩リンパ節郭清の意義はあるが、「薬物療法によって局所制御や生存への意義は薄まっている」と述べた。また病理診断はOSNA法に移行しつつあることも付け加えた。